第18話

君に伝えたい事
1,027
2025/02/17 10:00 更新
お昼の『おでこにキス事件』の後から、何となく加賀美さんとぎこちない空気が流れてしまっている。
事件直後──
(なまえ)
あなた
ご…ごめんなさい…!
私ってば焦っちゃって…。
加賀美隼人
加賀美隼人
い、いえ…そんな…!
こちらこそすみませんでした!
こうなるとは思ってなくて…。
(なまえ)
あなた
で、ですよね…!
加賀美隼人
加賀美隼人
ははは…
(なまえ)
あなた
……。
加賀美隼人
加賀美隼人
……。
(なまえ)
あなた
(あぁぁぁ…!私のバカ…!!)

放課後の廊下を歩きながら、心の中で頭を抱える。

お互いに照れてしまって、なかなか上手く話せなかった。

(なまえ)
あなた
(私は…嫌じゃなかったんだけどな)
自分の額に触れる。

あの感触が忘れられない。


…いや、忘れたくない。
(なまえ)
あなた
(少し、嬉しかった…。)
(なまえ)
あなた
(…って、これじゃあ私変態みたいじゃん…!)

頬にそっと触れる。

…一体、どうしてしまったのだろう。

加賀美さんに出会ってから、

色んな事が変わり始め、色んな気持ちを知った。
(なまえ)
あなた
(今までの私だったら、こんな幸せになってなかっただろうなぁ…。)
(なまえ)
あなた
(加賀美さんと、話したい…。このままなんて嫌だ…!)

──加賀美さんに、伝えたい事があるの



私は加賀美さんを探そうと走り出した。

教室を探しても、職員室を覗いても、加賀美さんは見つからない。

諦めて帰ろうとした時、昇降口で声がした。

美人な女子生徒
──、───。

声のする方へこっそり歩いていくと、

…やはり、加賀美さんがいた。

だが…すぐ側に、同じクラスの美人と言われている女の子も立っていた。
(なまえ)
あなた
(この空気…もしかして…。)

私は影に隠れ、様子を伺うことにした。
美人な女子生徒
あの…加賀美くん…。
私、話したい事があって…いいかな?

後ろ姿しか見えないけれど、黒いサラサラの髪から覗く耳は真っ赤になっていて。

もじもじしている所を見ると、この後の展開はおおよそ予想がついてしまう。

加賀美隼人
加賀美隼人
いいですよ。どうかしました?
美人な女子生徒
…あっ、あの!あのね…!
私…加賀美くんの事が、1年の頃からずっと好きだったの…!付き合ってください!

その一言が冷たい氷の矢みたいにグサリと心に突き刺さる。

──もし、これでOKだったら?

最悪のことをどうしても考えてしまう。

手足が震えて、逃げ出したくても逃げ出せない。

加賀美隼人
加賀美隼人
……ありがとうございます、
(なまえ)
あなた
…!!
バクバクと心臓が煩い。

呼吸が乱れていくのを必死で抑えた。
(なまえ)
あなた
(どうしよう、どうしよう…っ!)
(なまえ)
あなた
(嫌だ…嫌だ…!!)

ぎゅっと目をつぶり、耳を塞ぎかけた瞬間。
加賀美隼人
加賀美隼人
…ですが、すみません
貴女の気持ちに応えることはできないです
加賀美隼人
加賀美隼人
私にはもう他に好きな人がいるんです
その人じゃないと、私は…満足できない

加賀美さんはきっぱりと告げた。

けれど、何処か相手に心から申し訳ないと思っているのが伝わるような、悲しさもあった。

美人な女子生徒
そっか…。私には、入る隙間もないみたいだね
加賀美隼人
加賀美隼人
すみません…。
でも、勇気を出して告白してくれてありがとうございました

微笑む加賀美さん。

女の子は、

美人な女子生徒
ううん、こちらこそ…こんなに夢中にさせてくれてありがとう。…バイバイ、加賀美くん

と言って、去っていった。

私は力が抜けて、その場にしゃがみ込んでしまった。

(なまえ)
あなた
(良かった…。)

じわ、と目頭が熱くなり、顔を覆った。

加賀美隼人
加賀美隼人
…全く、盗み聞きなんてどこで覚えたんですか?

その言葉にドキッとして顔を上げると、加賀美さんが私を見下ろしていた。

(なまえ)
あなた
か、加賀美さん…!?いつの間に…。
加賀美隼人
加賀美隼人
最初から見えていましたよ。誰かいると思えば…やはりあなたの名字さんでしたか
(なまえ)
あなた
(バレてたんだ…。)

黙って頷くと、加賀美さんは私の腕を引いて立たせた。

(なまえ)
あなた
…ごめんなさい…。聞くつもりは…なかったんです
加賀美隼人
加賀美隼人
ええ、分かっていますよ

加賀美さんの声が優しくて、引いてきたと思った涙がまた溢れてきた。

(なまえ)
あなた
……加賀美さん、好きな人いるんですか…?
加賀美隼人
加賀美隼人
……はい、私の何よりも大切な人です

…ああ、きっと加賀美さんの好きな人には敵わない。

あの子すら入る隙間が無いんだから、きっと誰も入れないんだろうな…。


加賀美さんへ伝えたい事があったのに、嘘みたいにスッと消えてしまった。

もう諦めて、この気持ちとばいばいしよう。

それとも、いっその事バッサリと断ってもらった方が楽だろうか。

…どっちにしたって、精一杯の笑顔を届けよう。

心配しないように──
(なまえ)
あなた
…加賀美さん、
(なまえ)
あなた
…貴方の事が…好きでした

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