side.六花
杏寿郎を初めてこの腕に抱いた日のことを、私は今でも鮮明に覚えている。
まだ幼く、頼りない小さな身体。
それでも、焔色の瞳だけはどこまでも真っ直ぐで、私をじっと見上げていた。
あの時、私はこの子を守らなければならない────
そんな、使命感にも似た強い気持ちを抱いたのだ。
それからの日々は、あっという間だった。
杏寿郎は驚くほど素直で、努力家で、いつも私の背中を追いかけてきた。
剣の稽古も、家の手伝いも、何事にも一生懸命で。
その姿を見るたびに、私は誇らしく、そしてどこかくすぐったいような気持ちになった。
真っ直ぐな焔色の瞳は、
みるみるうちに大人びていった。
気がつけば、私よりも背が高くなり、肩幅も広くなっていた。
その成長に気づいた時、私は密かにショックを受けたものだ。
もう、守るべき小さな子供ではない。
それでも、私はいつまでも杏寿郎の傍にいたかった。
杏寿郎に避けられるようになって、私はようやく自分の気持ちに気づいた。
これは親愛ではなく、情愛───
一人の女性として、杏寿郎を愛していたのだと。
けれど、その時にはもう、手遅れだった。
それでも、私は幸せだった。
杏寿郎を守ることができて、そのために死ぬことができて。
この命を懸けて、
彼の未来を繋ぐことができたのだから。
私は本望だ。
誰に何と言われようと、
幸せな人生だったと胸を張って言える。
……でも、それでも。
一つだけ、願うことが許されるのならば。
「……来世でも、来来世だっていい。」
「再び、君と巡り会えたなら。」
その時こそ、私はもっと素直に、もっとたくさんの想いを伝えたい。
杏寿郎の隣で、彼の笑顔を守り続けたい。
ただそれだけが、今の私の、唯一の未練。
ありがとう、杏寿郎。
君に出会えて、本当に良かった。
どうか、君の未来が、光に満ちたものでありますように。
───私は静かに、闇の中へと還っていく。
その先に、また君の面影があることを、心から願いながら。
心桜さま、chulaさま、わぁさま
皆さまスポットありがとうございます✨️❤️🔥













編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!