第53話

氷柱の独白。
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2025/07/15 22:00 更新
side.六花




杏寿郎を初めてこの腕に抱いた日のことを、私は今でも鮮明に覚えている。



まだ幼く、頼りない小さな身体。

それでも、焔色の瞳だけはどこまでも真っ直ぐで、私をじっと見上げていた。




あの時、私はこの子を守らなければならない────
そんな、使命感にも似た強い気持ちを抱いたのだ。





それからの日々は、あっという間だった。

杏寿郎は驚くほど素直で、努力家で、いつも私の背中を追いかけてきた。


剣の稽古も、家の手伝いも、何事にも一生懸命で。



その姿を見るたびに、私は誇らしく、そしてどこかくすぐったいような気持ちになった。






真っ直ぐな焔色の瞳は、
みるみるうちに大人びていった。

気がつけば、私よりも背が高くなり、肩幅も広くなっていた。



その成長に気づいた時、私は密かにショックを受けたものだ。



もう、守るべき小さな子供ではない。



それでも、私はいつまでも杏寿郎の傍にいたかった。






杏寿郎に避けられるようになって、私はようやく自分の気持ちに気づいた。

これは親愛ではなく、情愛───


一人の女性として、杏寿郎を愛していたのだと。





けれど、その時にはもう、手遅れだった。

それでも、私は幸せだった。



杏寿郎を守ることができて、そのために死ぬことができて。

この命を懸けて、
彼の未来を繋ぐことができたのだから。


私は本望だ。





誰に何と言われようと、
幸せな人生だったと胸を張って言える。



……でも、それでも。
一つだけ、願うことが許されるのならば。




「……来世でも、来来世だっていい。」

「再び、君と巡り会えたなら。」




その時こそ、私はもっと素直に、もっとたくさんの想いを伝えたい。

杏寿郎の隣で、彼の笑顔を守り続けたい。



ただそれだけが、今の私の、唯一の未練。


ありがとう、杏寿郎。
君に出会えて、本当に良かった。

どうか、君の未来が、光に満ちたものでありますように。




───私は静かに、闇の中へと還っていく。

その先に、また君の面影があることを、心から願いながら。







心桜さま、chulaさま、わぁさま

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