夜の空気は、昼のざわめきとは違って静かで、どこか甘い。
あなたが約束の場所に向かうと、
すでにマークが外で待っていた。
街灯に照らされる彼は、落ち着いているようで、
どこかそわそわした影もあった。
声が優しくて、あなたは胸の奥がじんと熱くなる。
尋ねた瞬間、マークは数秒だけ言葉を探し、
そしてあなたの前にゆっくりと歩み寄った。
その名前の呼び方だけで、
もう心が揺れる。
あなた が視線を落とすと、
マークは小さく笑い、そして真剣な目で見つめてくる。
胸の奥が強く締めつけられた。
マークの声は静かで、でも決意があった。
まっすぐで、逃げ場のない言葉。
あなたは一瞬、息が止まった。
マークの声がほんの少し震える。
あなた の心が一気にかき乱される。
ずっとしまい込んでいた想いが、
呼吸と一緒にゆっくり溢れ出す。
名前を呼んだ瞬間、声が震えていた。
マークはそっと手を伸ばし、
彼女の頬に触れる前に一度だけ問いかける。
その言葉が、怖くて、でも嬉しくて。
あなたはゆっくりと首を横に振った。
その一言で、マークの表情がふっと崩れる。
安堵と恋しさが混ざったような、弱い笑顔。
そして、手が触れた。
頬を包む指先は温かくて、優しくて、
それだけで涙が滲みそうになる。
名前を呼ばれた瞬間、
距離がゆっくり縮まった。
唇が触れそうなところで、
マークは一瞬だけ止まる。
そのまま、ふたりの影が重なった。
キスは深くもない。
でも、ずっと恋しくて、ずっと求めていた温度で。
離れたあと、マークが額を重ねながら小さく笑った。
あなたは胸に手を当て、震える息を吸う。
──この夜から、もう元には戻れない。
そんな確信が、ふたりの間に静かに灯っていた。














編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。