家の近くまで来ると、街灯が少なくなり、夜は静かに深くなる。
ふたりの影はひとつに繋がりそうなくらい寄り添って歩いていた。
あなたは、このまま歩き続けられたらいいのに…
そんな気持ちを胸の奥で隠しながら、小さく息を吸う。
玄関前で立ち止まると、マークも名残惜しそうに足を止めた。
彼があなたの方を向く。
その言葉が夜気の中で溶けてしまうほど静かで、
でもどこまでも真っ直ぐだった。
あなたは思わず目をそらす。
マークの影がひとつ、近づいてくる。
玄関灯の明かりが二人の距離を照らす。
その声は低くて、ほんの少し笑っている。
あなた がそう言うと、マークは一瞬だけ驚いたように目を見開き、
次の瞬間、少し照れたように笑った。
あなた は小さく頷くしかなかった。
マークはその仕草をじっと見つめ、
ゆっくりと近づき、手を伸ば――しかけて、止めた。
息が止まる。
沈黙が、ふたりの間を甘く満たした。
マークは視線を落とし、少しだけ身を寄せる。
そう言って、彼はそっとあなたの頬に触れた。
指先は震えているのに、優しさはまっすぐ。
あなたの心臓が一気に跳ね上がる。
彼は手を離しながら、名残惜しそうに目を細めた。
玄関前の空気が、一瞬で甘くなる。
あなたが声を出せずにいると、
マークはふっと笑い、軽く頭に手を置いた。
その手つきは優しいくせに、心をざわつかせる。
あなたが小さく返す。
別れ際、ほんの数秒。
2人ともその場を離れられなかった。
最後にマークがもう一度だけ言う。
そうしてようやく、マークは歩き出した。
あなたは胸の奥を押さえながら、
消えていく背中をずっと目で追っていた。














編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。