第27話

過去と過ち の段
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2025/03/31 22:00 更新
しばしの沈黙。
しかし、その沈黙は意味がある。

こんなに小さい男の子が、嫌われている存在の私になにかを伝えようとしているのだ。

天井から落ちた(落とされた)時、きり丸くんとは再会を果たしたがいい顔はしてなかったと思う。

盗み聞きしてた時、怖いって言ってたし。

俯いていたきり丸くんがぽつりぽつりと話し始めた。
きり丸
俺...今までの天女様にいい扱いをされなかったんです。
きり丸
殴るとか、そういう暴力はされなかったけど...この前の天女様には突き飛ばされて...頭を打ったことがトラウマになって...
ようやく絞り出た声。

まだ何か言いたそうに考え込んでいた。
あなた
それは...辛かったわね
こういう時、どういう声掛けをすればいいか分からない。ましてや、私(天女)の存在自体がこの子にとっての地雷なのだから間違った選択はできない。

きり丸くんは俯いたまま動かなくなった。
乱太郎
きり丸は...なぜだか、前回に限らず天女様に目をつけられやすくて。突き飛ばされる以外にも色々あったんです...
あなた
そうだったの...
どういう基準で目をつけられてるのかは知らないが、運が悪かったとしか言いようがないのだろうか。

前回に限らず他の天女にも酷い扱いをされれば嫌われるのは必然だと思う。
あなた
それでも、またこうやって会えて嬉しいわ。
話してくれてありがとう。
あなたは優しく微笑みかけた。
きり丸side
きり丸
(あぁ...この人は)
今までの天女様とは違う。

なんとなくだが、自分に微笑んだ姿を見てそう思った。

肯定もせず否定もしない。話を聞いて受容する。
それだけでも心地よかった。

俺は話を続けた。
きり丸
俺...孤児なんです。戦で、住んでいた村も家も家族も失って
そう言うと目の前の天女様は少し目を見開いたが、すぐに話を聞く姿勢に戻った。
きり丸
なぜだか分からないんですけど、前の天女様にそれが知られてしまったんです。
きり丸
それを知った天女様は皆の前でそれを大声で話して...馬鹿にされた事があります
きり丸
きり丸...
隣にいた乱太郎が悲しそうな顔を向ける。
きり丸
馬鹿にされた時、俺は...自分が分からなくなりました。孤児は、いけないことなのかなとか俺だけこんな風に生きていて良かったのかなって
俺は天女様に向き直った。

友達にも話すような話題ではない。にも関わらず、なぜこの話をしようと思ったか自分でも分からない。
きり丸
天女様は、孤児の俺を...どう思いますか?
どんな答えを求めていたのか定かではなかった。

天女様はゆっくり目を閉じ、意を決したように話し始めた。
あなた
頑張ったんだなって...思う
きり丸
...え?
あなた
私も、孤児だったし。あの時は幼かったから明日死ぬんじゃないかって思いながら生きてた
乱太郎
あなたお姉さんも...?
隣の乱太郎も驚いたのか目を見開いていた。
あなた
うん...まぁ、今とは時代が違うから戦で家族を失ったとかじゃなくて...普通に捨てられたの。
あなた
母親に手を引かれて、ここに居なさいって薄暗い路地に置いていかれて。あの時の母親の後ろ姿は今でも忘れられないよ
俺は言葉が出なかった。

初めて会った時、そんな暗い過去を持ってるなんて思いもしなかったから。

今までの天女様も恵まれて育ったような人達ばかりだったから、良い時代から来たんだなと思っていた。
あなた
だから...頑張ったね、なんて言葉は今の話の流れだと少し可笑しいかもしれないけど。でも、君はすごく頑張ったんだなって心からそう思う。
目の前の天女様は力なく微笑んだ。
きり丸
そうだったんですね..
想定外の答えで唖然とした。
あなた
うん、きり丸くんはこうして今生きているんだから。胸を張って生きていけばいいんだよ。
きり丸
っ...
泣きそうになったけど、何とかこらえた。

乱太郎にも目の前の天女様にも心配かけたくなかったから。
乱太郎
あの...あなたお姉さんはそんな状況でどうやって生き延びたんですか?
幼い時って言ってましたけど...
あなた
うーん..."拾ってもらった"が答え、なのかな?
その人が命の恩人であり、仕事の上司なの
天女様は、あはは...と頬を掻きながら困ったように笑った。
乱太郎
お仕事の...
あなた
うん...まあ、色々あったし、私の過去なんて話しても面白くないと思うけど..
乱太郎
聞きたいです!!
乱太郎
ねっ、きり丸?
わくわくした顔で乱太郎は俺の顔を覗き込んだ。

正直、聞きたい。

同じ境遇こじだからだろうか。
きり丸
俺も...聞きたい、です
天女様は困ったように考え込んだ。
あなた
わかった...そこまで言うなら、話すわ。
なるべく面白いとこを厳選して...ね

天女様は決心して、過去の事を語り始めた。

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