彰人 side
オレは部屋でイヤホンを片耳に音楽を聴いていた.
そんな時だった.隣の部屋_あなたの下の名前の部屋から声が聞こえたのは.
オレは少し躊躇いながらもあなたの下の名前の部屋に行くことにした.
コンコン
……シュッ
部屋に入った瞬間,目に入ったのは…カッターで自分のことを傷つけている,妹の姿と部屋に散らばった幾つもの破られたコンテスト用のイラスト.
破られているが,全て綺麗な作品だった.
当たり前に,あなたの下の名前は慌てた様子だった.
あなたの下の名前は直ぐにカッターの刃をしまい,リスカした腕を隠した.
確認をすることでも無い.
オレはしっかりこの目で見てしまったのだから.
オレはさっき本能的に隠された左腕を指さした.
案の定,"バレた"という顔でオレを見てきた.
そして少しの間が空いてあなたの下の名前はこう言った.
それはそうだ.オレはコイツの事を今まで酷い扱いをし、かってに嫉妬してきた.喋りは挨拶という名の一言だけ.普段は喋らないのが日常だった.
今更兄としてコイツを心配したってこうなることは無理ない.
そんなの,分かってたはずだろ
だから今,謝らなければ.
今度こそ,チャンスは無いかもしれない.
このリストカットだって,あん時親父のことを止めていれば,……いや,もっと前に仲直りをしておけば,あなたの下の名前はこんなことをする必要が無かったのかもしれない.
そんなことを思った.だからオレは……これまでのことを謝るという決心を抱いた.
案の定,あなたの下の名前は何言ってんだコイツという顔でオレのことを見てきた.
それでもオレは続ける.
あなたの下の名前は泣いていた.
オレはこんなにも実の双子の妹を苦しませて,何をやっていたんだろうか.
これが今のオレに出来る最低限の事だ.
あなたの下の名前は頷いて左腕を出した.
その傷は,深くてすごく痛々しかった.
よく見ると前にやった傷跡もあるみたいだ.
さすがに昔のはバレないと思っていたのかあなたの下の名前は驚きの声を上げた.
あなたの下の名前は顔を顰めた.
それくらい分かるんだよ,……これでも双子だからな.
……この傷跡たちは恐らくもう完全に消えないだろう.
ちゃんと処置をしなかったんだろうな.
でも,やっぱりこういうことになったのはオレの原因でもある.
オレは再度謝った.
謝っても許されないことはわかってる.
だがあなたの下の名前はこう言った.
いや.違う.あなたの下の名前は何も悪くない.
だって,オレが勝手に嫉妬して,勝手にあなたの下の名前を突き放したからだ.
あなたの下の名前は急に泣き出した.
手当の仕方が下手くそだったか、.ᐣ
そうだ.オレは何年も前からコイツの名前を言っていない.
…そんなことを話しているうちに手当が終わった.
これ以上ここにいるのはどうかと思い,オレはあなたの下の名前の部屋を出ようとする.
戻ろうとした時.あなたの下の名前がオレの服の袖をきゅっと掴んだ
少し間が空いた.
そんなことを言って甘えてくる妹が"可愛い"と思ってしまった.
だから思わず頷いてしまったんだ.
オレは再度あなたの下の名前の方に体の向きを戻した.
お互い無言の時間が続いた.
初めに口を開いたのはあなたの下の名前だった
自分でこんな事言うのも恥ずかしいけどな.
ふにゃっと笑うあなたの下の名前の顔はやっぱり"可愛い"と思ってしまった.















編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。