第63話

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2026/07/11 03:00 更新


ツアー最終日が終わった夜。



仁人くんの部屋。



いつもならライブ後は疲れているはずなのに。

今日の仁人くんは、ずっと機嫌がいい。



「……。」


「仁人くん?」


「ん?」


「さっきからずっと笑ってる。」



そう言うと。

仁人くんは少し照れたように笑った。



「だって。」

「嬉しかったから。」





__

ソファに並んで座る。

部屋の隅には。

黄色のツイードジャケットを着たうさぎのぬいぐるみ。


あの日。

仁人くんがプレゼントしてくれた大切なもの。

そして。

二人が身につけているネックレス。


いつの間にか。

この部屋には二人の思い出が増えていた。



「今日さ。」



仁人くんが呟く。



「本当にびっくりした。」


「そんなに?」


「した。」


即答。

思わず笑う。



「そこまで?」


「そこまで。」

「だって最終日だよ?」



仁人くんは少し笑う。



「最後の日。」

「あなたが来てくれるなんて思ってなかった。」


「勇斗くんが言わなかったら、私も諦めてたよ。」


「……あいつ。」



文句を言いながらも。

顔は嬉しそうだった。



「でも。」



仁人くんは優しく笑う。



「ありがとう。」

「来てくれて。」



その一言が。

すごく嬉しかった。





「でもさ。」



仁人くんが少し遠くを見る。



「俺。」

「昔だったら。」

「また舜太見てるのかなって思ってたと思う。」



少しだけ胸が痛む。



「仁人くん。」


「でも。」



仁人くんは首を振る。



「今は違う。」

「もちろん。」

「舜太のこと好きなのも分かってる。」

「推しなのも分かってる。」



少し笑う。



「そこはもう諦めた。」


「諦めたって(笑)」


「だって歴が違う。」


「そこ張り合うんだ。」


「一応、彼氏だから。」



そう言って笑う顔は。

もう昔みたいに苦しそうじゃなかった。





「でも。」



仁人くんは続ける。



「今日、分かった。」

「あなたが見てたの。」

「俺だった。」



胸がいっぱいになる。



「ずっと見てたよ。」

「仁人くんが頑張ってるところ。」



そう言うと。

仁人くんは少し目を逸らした。



「……。」

「そういうの。」

「急に言うの反則。」


「なんで?」


「嬉しいから。」








少し沈黙。




そして。

仁人くんが小さく笑う。



「でもさ。」


「ん?」


「今でも少しだけ。」

「嫉妬する。」



思わず笑ってしまう。



「まだするの?」


「する。」


「舜太くんに?」


「……うん。」



正直すぎて。

また笑ってしまう。



「もう大丈夫じゃなかったの?」


「大丈夫。」

「でも。」



仁人くんは私を見る。



「好きな人が他の人見て笑ってるのって。」

「ちょっと気になる。」


「もう、可愛い(笑)」


「可愛い言うな。」



そう言いながら。

仁人くんも笑っていた。


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