ツアー最終日が終わった夜。
仁人くんの部屋。
いつもならライブ後は疲れているはずなのに。
今日の仁人くんは、ずっと機嫌がいい。
「……。」
「仁人くん?」
「ん?」
「さっきからずっと笑ってる。」
そう言うと。
仁人くんは少し照れたように笑った。
「だって。」
「嬉しかったから。」
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ソファに並んで座る。
部屋の隅には。
黄色のツイードジャケットを着たうさぎのぬいぐるみ。
あの日。
仁人くんがプレゼントしてくれた大切なもの。
そして。
二人が身につけているネックレス。
いつの間にか。
この部屋には二人の思い出が増えていた。
「今日さ。」
仁人くんが呟く。
「本当にびっくりした。」
「そんなに?」
「した。」
即答。
思わず笑う。
「そこまで?」
「そこまで。」
「だって最終日だよ?」
仁人くんは少し笑う。
「最後の日。」
「あなたが来てくれるなんて思ってなかった。」
「勇斗くんが言わなかったら、私も諦めてたよ。」
「……あいつ。」
文句を言いながらも。
顔は嬉しそうだった。
「でも。」
仁人くんは優しく笑う。
「ありがとう。」
「来てくれて。」
その一言が。
すごく嬉しかった。
「でもさ。」
仁人くんが少し遠くを見る。
「俺。」
「昔だったら。」
「また舜太見てるのかなって思ってたと思う。」
少しだけ胸が痛む。
「仁人くん。」
「でも。」
仁人くんは首を振る。
「今は違う。」
「もちろん。」
「舜太のこと好きなのも分かってる。」
「推しなのも分かってる。」
少し笑う。
「そこはもう諦めた。」
「諦めたって(笑)」
「だって歴が違う。」
「そこ張り合うんだ。」
「一応、彼氏だから。」
そう言って笑う顔は。
もう昔みたいに苦しそうじゃなかった。
「でも。」
仁人くんは続ける。
「今日、分かった。」
「あなたが見てたの。」
「俺だった。」
胸がいっぱいになる。
「ずっと見てたよ。」
「仁人くんが頑張ってるところ。」
そう言うと。
仁人くんは少し目を逸らした。
「……。」
「そういうの。」
「急に言うの反則。」
「なんで?」
「嬉しいから。」
少し沈黙。
そして。
仁人くんが小さく笑う。
「でもさ。」
「ん?」
「今でも少しだけ。」
「嫉妬する。」
思わず笑ってしまう。
「まだするの?」
「する。」
「舜太くんに?」
「……うん。」
正直すぎて。
また笑ってしまう。
「もう大丈夫じゃなかったの?」
「大丈夫。」
「でも。」
仁人くんは私を見る。
「好きな人が他の人見て笑ってるのって。」
「ちょっと気になる。」
「もう、可愛い(笑)」
「可愛い言うな。」
そう言いながら。
仁人くんも笑っていた。











編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。