「ねぇ。」
ある夜。
仁人くんの部屋。
いつものようにソファに並んで座っていると、仁人くんがスマホを置いた。
「ツアーファイナル前にさ。」
「うん?」
「頑張ろう会しない?」
「頑張ろう会?」
「メンバーと。」
「あと、スタッフさんも少し呼んで。」
仁人くんらしいと思った。
自分たちだけじゃなく、支えてくれている人たちへの感謝を忘れない。
「いつも助けてもらってるから。」
「みんなでご飯食べたいなって。」
そして。
「あなたも来てほしい。」
その言葉に胸が温かくなる。
「いいの?」
「もちろん。」
迷いなく返ってくる。
「最近、ゆっくりみんなで集まれてないし。」
「俺も久しぶりに一緒に行きたい。」
その笑顔に、自然と頷いていた。
「行く。」
「よかった。」
仁人くんは嬉しそうに笑った。
________
当日。
お店に着くと、すでにメンバーが揃っていた。
「あなたちゃん久しぶり!」
舜太くんが手を振る。
「最近ライブ以外で会ってないから寂しかった。」
「ライブでは会ってるじゃないですか。」
「それはファンとしてやん!」
その返しに笑ってしまう。
変わらない。
舜太くんも。
みんなも。
この空気が好きだった。
「相変わらず舜太推しなんだ。」
柔太朗くんが笑う。
「そこ変わらないね。」
「変わらないです。」
即答すると、
少し離れたところで聞いていた仁人くんが複雑そうな顔をする。
「……そこは変わってほしいんだけど。」
「まだ言ってる。」
メンバー全員が笑う。
その光景に、私も笑った。
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少し遅れて、スタッフさんたちが合流する。
そして。
その中に、あの女性スタッフさんがいた。
すぐに分かった。
グループチャットの写真で見た人。
公式SNSで何度も見かけた人。
「初めまして。」
女性スタッフさんが笑う。
「仁人くんの彼女さんですよね?」
「あ、はい。」
「よろしくお願いします。」
「こちらこそ。」
すると。
「仁人くんからよく聞いてます。」
その言葉に少し驚く。
「え?」
「優しい彼女さんだって。」
「いつも支えてもらってるって話してました。」
嬉しい。
本当なら、嬉しいはずだった。
仁人くんが自分のことを話してくれている。
大切に思ってくれている証拠。
なのに。
「……。」
なぜか胸の奥に小さな違和感が残った。











編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!