さくちゃんの口から
有り得ない言葉が飛び出した。
私はびっくりしてさくちゃんの顔を見つめる。
その顔は真剣で、私の目を掴んで離さない。
時間がスローモーションみたいだった。
さくちゃんが今も私のことを好きだったら…?
真剣だったさくちゃんの顔は、
一瞬にして柔らかな笑顔に変わる。
冗談だったってことだよね
あの真剣な表情が嘘とは
思えなかったけど……
まあ、期待しすぎもよくない
今でも好きなんてこと有り得ないし
さくちゃんがめっちゃ驚いてるけど
彼氏?いるわけない
3ヶ月前くらいまではいたけど
オタクすぎて振られたんだよね
だからさくちゃん推してるうちは
彼氏なんて作りません、決めました
その3ヶ月前まで付き合ってた人とは、
1年半くらい続いた。
その人が初彼だったのに
私がオタクなばっかりに……
さくちゃんが興味津々で
めちゃくちゃ聞いてくる。
元彼のことより
普通にさくちゃんと私の会話しようよ〜(?)
1年半って長い?
長いか
桃華に聞いたんだけど
高校生で1年続いてたら
なかなからしいよ(どこ情報)
……遂に来たか
この質問が
……やばい、
私も別れ告げられた時
「そんな理由?」って思っちゃったから
つい前のめりになって言っちゃった。
恥ずかしい
私があまりにもハイテンションになっちゃったから
なんだこいつ?って思ってそう
さくちゃんほんとごめん
ポーカーフェイスを忘れるな。あなた
前のめりになってたやつ!?
たしかに、あれは素の反応だけど……
いきなり素出しても、って感じじゃない?
さくちゃんがそこまで言うなら、
素っていうか、自然体で話せるように
頑張ろうかな
何回も自然でいいよとか
気遣わなくていいよとか
言ってくれてるし
その気持ちに応えないのは
オタクとしてどうなの👈🏻?
だって1年半も付き合ってたらさ
それなりの喧嘩も話し合いで解決するけど
まさかオタクが理由で
別れるなんて思ってなかった
私はちゃんと好きだったし
もちろんショックだったけど……
……ごめん、さくちゃん
はっきりと聞こえた
「よかった」って
これがどういう意味かは
なんとなく想像できる。
でも、勝手に期待して
勝手に落ち込みたくない。
だから触れたくないし
聞かなかったことにした。
話していると
あっという間に駅に着く。
……もう、しばらく会えないんだね
寂しいけど、アイドルだもん
当たり前だよね
ほっぺに手を触れると、
想像以上の涙が出ていた。
流れるように出ていたから
全く気づかなかった。
でも、寂しいとか
そんな彼女みたいなこと
言えないよ、恥ずかしいし
顔を上げると、優しい目で
見つめてくれてるさくちゃんがいた。
私は止まらない涙を
止めるのに必死で。
さくちゃんも寂しい、って
思ってくれてたんだ
私だけかと思ってた
改めてお互い寂しいってわかると、
なんか恥ずかしい……
また溢れそうな涙を堪えて、
さくちゃんから顔を背けて歩き出す。
そう言ってさくちゃんは
お店の方向へと帰る。
……まって
まって
まって
今の、何
さくやside
なんとなく聞いたあなたへの質問。
…そりゃあ、いないわけない、わかってた
自分で色々質問しといて、
その度になんかモヤモヤする
1年半って相当だし
相当安定してたんだろうなー
でも、別れた理由が「俺」なのが
ちょっとだけ嬉しかった
時間ってあまりにも残酷で
特にあなたといるときは
もっと短く感じる気がする
本当はもうちょっと話してたかった
でも、あなたのお母さん
めっちゃ怒ってるらしいから無理だった
ふとあなたを見ると、
大きな目からボロボロと涙を零していた。
本人は気づいてないのか、
カバンから定期を探している。
顔をあげたあなたは、
やっぱり気づいてないみたいで
「?」の顔のまま。
こんなに涙流してて
気づかないことある?
さっきも気づかないまま
泣いてたけど(25話参照)
やっぱり気づいてなかったんだ
そう言われたあなたは、
焦って涙を拭う。
あなたは泣いてるのを自覚してからか、
さっきよりもっと涙が溢れていた。
泣いてるのが可愛くて、すぐにでも
抱きしめたかった
でも今ハグしても
あなたを困らせるだけだから
俺にはできなかった
そう言いながら見上げてきたあなた。
俺と同じ気持ちだったのが
嬉しかったし
何よりも
可愛くてしょうがなかった
俺も寂しいと伝えると、
あなたは恥ずかしそうに
顔を斜め下に逸らす。
逸らしたと思ったら
またこっちを見て、また逸らす。
その仕草が可愛くて
自然と笑ってしまう
やっと涙が止まったからか、
少し寂しげな笑みでそう言う。
駅の方に体を向けて歩き始めるあなた。
……もう、しばらく会えない
どうにでもなればいいと思った
振り向いたあなたは、
また涙が溢れていた。
俺は振り向いたあなたを
引き寄せて抱きしめた。
自分でも大胆な行動に出たと思う
あなたも動揺してるのか、
声も出てないし手は下ろしたまま。
3秒くらい経って離すと、
自分がハグした事実が恥ずすぎて
あなたの顔も見れずに、
そう言ってお店に引き返した。
自分がした行動なのに
恥ずかしがるの、まじか
俺、やっぱりガキか
♡2200
☆570

















編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。