第7話

episode2-1
54
2026/01/22 04:38 更新





その時は、委員会があった翌日の昼休みにやって来た。
先生
数学のテスト追試だった人、返却するからもらいに来てー


これは完全な当てつけだけど、なんでみんなが色んな教室に散っていていない人もいる昼休みの時間帯に返却するんだ??


朝のホームルームのうちに返してくれれば、

その分追々試までに勉強できる猶予も増えるのに。


なんて心の中で悪態をつきながら自分のテストをもらうために、なんとなくできている列に並ぶ。

先生
40点未満の人は今日の放課後、1組の教室で追試するからねー


先生から答案用紙を受け取り、まだ開かずにそのままお昼を食べていた席に戻る。

青奈
どうだった?
あなた
今から見る、
一緒にお昼ご飯を食べていた青奈ちゃんが心配そうに、すこし合格を期待したような面持ちで聞いてきた。

あなた
…うわー!38点!

なんと、追々試を回避するために、たった2点が足りなかったのだ。

青奈
えー!惜しすぎる、、、
あなた
この2点を落としたせいで私の放課後は潰れるっていうのか…
20点とか、圧倒的に合格点に届いていなかったらまだ諦めがついた。

まさかたったの2点に泣くことになるだなんて……

追々試以降はもうこの試験を引き摺ることはないらしいけど、

ここでまたコケて低い点数を取ったら補習とかで声が掛かりそう。
放課後までにもう一度、昨日さとみ先輩に教えてもらったところを復習しておこう。



















  *     *     *     *     *



閑静な教室にタイマーの規則的な音が鳴り響く。

日が沈みかけた頃、私はようやく追々試を終えた。
追々試まで試験を受けたのは5人程度しかいなくて、

教室に入った時は絶望しかけた。

いよいよ自分の成績の低さに焦りを覚えてくる。

来年は受験生だし、本当になんとかしないとまずい。



先生が回答用紙を回収しにまわる。


さとみ先輩のおかげで追試の時よりもかなり答えを埋められた気がする。



迅速に荷物を片付けて教室を出た。

なんだか今日は、精神的にも肉体的にも疲れた。早く帰って寝よう。


校門を出たところで、見覚えのある人影を見つける。



……さとみ先輩だ。


先輩のおかげでこの前の追試よりも解けたことのお礼を伝えるチャンスだろうか?


でもそんなに親しい間柄でもないのに急に話しかけられても迷惑だろうし……
脳内で考えを巡らせながら、結局話しかけることができずに、
一定の距離を保ちながら歩く。

あなた
…!!

信号に差し掛かった時、さとみ先輩がこちら側を見て目が合って、一瞬焦りつつ、軽く会釈をした。


向こうも私だと気が付いてくれたようで、軽く右手を挙げる。

信号が青になってもなお立ち止まっている先輩に、鼓動が速くなるのを感じた。


…あれって、私を待ってくれているってことだよね、ずっとこっちを見ているし。



さとみ
おつかれ、もしかして追々試?
あなた
そうです!やっぱり追試だめでした、、
あなた
でも!昨日教えていただいたおかげで結構手応えあるんですよ
さとみ
お、マジ?よかったじゃん
さとみ
結果楽しみにしてるわ
あなた
え、教えるんですか?
さとみ
そりゃ自分が教えたんだから気になるでしょ

まあたしかに理論的には先輩の言うことは何も間違っていないと思う。


でも、

あなた
私の中で上手くできたってだけで、一般的な成績の人からしたら普通に低いと思いますよ、
さとみ
いやいや、だから俺が教えてるんでしょ、
さとみ
できなかったとこ出来て点数伸びたなら普通に喜ぶって

私なんかの成績で喜んでくれるだなんて…

生徒同士だから先生よりも距離が近いのは至極当然だけど、先生よりも親身になってくれるから少し感動する。
あなた
ありがとうございます…
あなた
先輩は部活とかですか?
さとみ
そ、大会近いからさ
あなた
何部なんですか?
すこし人のプライバシーに踏み込みすぎだろうか、と言ってしまってから少しだけ後悔した。

所属する部活くらいならまだ日常会話の範疇だろうか?

自分の周りの人はほとんど部活に所属していないからこういう会話には慣れてなくてわからない。

さとみ
バド部

あなた
え!私も高1のときバド部だったんですよ
さとみ
、そうなの?文化系かと思ってたわ
あなた
あ、でも3週間くらいで辞めちゃったんです
さとみ
まじ?それ理由きいても大丈夫なやつ?
あなた
大丈夫ですよ
あなた
なんか周りとの人間関係が上手くいかなくて、ずっと浮いてたんですよね、、
さとみ
え、ほんとに大丈夫なやつ?
あなた
気にしないでください!もう1年も前ですし、私もあんまり気にしていないので

1年前、中学から続けていたバドミントン部に入部したけれど、

体育館に入って顔を合わせた瞬間に分かった。

そこにいたのは、明らかに私とは住んでいる世界が違うような女の子たち。

同じクラスにいたら、確実に違うグループで過ごしているような、私とは全くちがうキラキラした女の子たち。
最初のうちは、3年もあるのだから仲良くなれるだろうと思っていたけれど、私と同級生の会話はいつも何処かぎこちなくて、距離感があった。
類は友を呼ぶてきな理屈なのか、先輩方も同じような雰囲気の人ばかりで、うまく距離を縮められず、

また別の場所でコミュニティをつくろうと、早めに諦めて退部してしまった。

3週間しかいなかったし、男子と女子は基本的に活動が別の部活だったから、当たり前にさとみ先輩のことは覚えていない。

向こうが私のことを見たことがあったのか否かは定かではないけれど、そもそも図書委員で会った時が初対面だと思っていた。


さとみ
へー、じゃあどこかで会ってたかもね
あなた
そうですね、
もうあまり記憶ないですけど、なんて軽く笑いながら付け足す。



あなた
あ、わたしずっとさとみ先輩に聞きたかったことがあるんですけど、
さとみ
なに?
あなた
どうして私は、先輩と当番一緒になったのかなって

青奈ちゃんと一緒になれなかったことを未だに恨んでいると思われそうで不安だったけど、

さとみ先輩はきっとそこまで細かい事情を知らないだろうし、

このくらいなら大丈夫だろうかと思って思い切って聞いてみた。
あなた
ほら、わたし当番決める時いなかったじゃないですか

一向に先輩から返事が返ってこず、隣を歩く先輩の顔を覗き込んでみると、なんだか驚いたような、意表を突かれたような表情をしていた。

聞いてはいけないことだっただろうか、と思い謝ろうとしたところで先輩が口を開く。
さとみ
俺火曜以外の放課後、部活とか課外で予定空いてなくてさ、
さとみ
あと、委員長が3年生は受験で忙しいから、そういう時に1,2年がカバーできるようにって
あなた
そうだったんですね!受験生忙しいですもんね
そんな合理的な理由があったのかと、思わず目を丸くした。

私は出席していないから誰が委員長なのかすら知らないけれど、きっと気が利くいい人なんだろう。
さとみ
あなたの名字さんてどの電車乗ってるの?
あなた
私は1番線です!
さとみ
じゃあ別だわ、俺2番線
あなた
時間大丈夫ですか?
さとみ
…やべ、あと2分で来る
さとみ
ごめん走るわ!また来週ね!
あなた
お疲れ様です!
先輩と同じ電車じゃなくて内心ほっとした。

電車まで同じだと正直心臓がもたない。

ただでさえまともに話せているかわからないのに……。


先輩に会えることが嬉しい反面、どうしてもどこか緊張してしまう。



にしても走るの速かったな、なんて思いながら、1番線のホームで電車を待った。















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