雨が降ってできた水溜りのように見たままを
そのまま反射してくれる、ガラスの表面に
どこか場違いな僕らが映った、と認識した瞬間、
無機質で機械的な音がして、ドアが開いた。
深呼吸の、息を吐くときのような
心からの呟きと共に、口角を上げる
宝探しをするかのように辺りを見回しながら
鼻歌を微かに歌って、スキップするように歩く
だがそれも、足音でかき消されてしまうほどには
小さく、ゆったりとしたテンポだった
そんなご機嫌な彼女を見て、
僕のテンションも段々と上がっていく
このときは、後に僕が後悔することなんて
考えてもいなかったから
____ はっきり言おう 。後悔している 。
冗談だと思っていたのに、
本当に買うだなんて思ってもいなかったのだ
ましてや、彼女の押しがこんなに強いだなんて
そう、少し上擦った声で話す彼女は
白いTシャツを抱えている
その胸元には、なんだかよく分からない
キャラが描かれていて、その下には
『 口癖は「 ラーメン一丁 」 』
…と、買いてある
僕がそう声を掛けるが
彼女は全く聞く耳を持たず、真剣に選んでいる
なんて、なんて真っ直ぐで、
綺麗な感情表現をするひとなのだろうか
でも、僕は彼女の喜と楽の表情しか知らなくて
それがどこか、寂しいようで、悔しかった
くるりと振り返って、こちらを見る
その顔には満面の笑みが浮かんでいる
ね!と聞くその声には、僕が買うという確信で
いっぱいで、居心地が悪い
そうやって表情をころころと変えるのを
じっと見つめないように気をつけて、
感じた少しの寂しさを、
「 ほら、早くしないと時間なくなるよ 」
なんて言って、誤魔化した
彼女はすぐさまハッとして、
ねえねえ早く!!と今度は僕が急かされる
そんな会話をする僕らを、
店員は不思議そうな顔をして見つめていた
わざわざ3時に予約したのは
それが理由だったのか、と今更ながらに理解した
そういう細かいところはこだわるくせに、
ところどころで大雑把なのは直せないのだろうか
お昼すぎ、もうすぐでおやつの時間
正午からは少し傾いた太陽の光が
二人を暑苦しいほどに包み、影を濃くしていた
この時間だけは、二人きりの観測所と同じように
少し静かで、騒がしいときが過ぎていった













編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!