第10話

 . 静寂に明るさを添えて
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2026/07/11 03:40 更新








  雨が降ってできた水溜りのように見たままを
  そのまま反射してくれる、ガラスの表面に

  どこか場違いな僕らが映った、と認識した瞬間、
  無機質で機械的な音がして、ドアが開いた。


 わ、実家のような安心感だぁ…! 




  深呼吸の、息を吐くときのような
  心からの呟きと共に、口角を上げる


  宝探しをするかのように辺りを見回しながら
  鼻歌を微かに歌って、スキップするように歩く

  だがそれも、足音でかき消されてしまうほどには
 
  小さく、ゆったりとしたテンポだった


  そんなご機嫌な彼女を見て、
  僕のテンションも段々と上がっていく


  このときは、後に僕が後悔することなんて
  考えてもいなかったから


 あっ!あったよ、見つけた!! 






  ____ はっきり言おう 。後悔している 。


  冗談だと思っていたのに、
  本当に買うだなんて思ってもいなかったのだ

  ましてや、彼女の押しがこんなに強いだなんて



knmc
 ….本当に買うの? 
 もっちろん! 
 刀也も一緒に買わない? 



  そう、少し上擦った声で話す彼女は
  白いTシャツを抱えている


  その胸元には、なんだかよく分からない
  キャラが描かれていて、その下には

    『 口癖は「 ラーメン一丁 」 』


  …と、買いてある



knmc
 なんでそれを選ぶかなぁ!? 
 というか私が選ぶね
 ちょっとばかし待ってて〜!! 
knmc
 ぃや、僕は別に… 
 ふふん、ダサTマスターに任せて! 
knmc
 あんまり誇ってほしくないなぁ… 


  
  僕がそう声を掛けるが
  彼女は全く聞く耳を持たず、真剣に選んでいる


  なんて、なんて真っ直ぐで、
  綺麗な感情表現をするひとなのだろうか

  でも、僕は彼女の喜と楽の表情しか知らなくて
  それがどこか、寂しいようで、悔しかった



 やっぱりお揃いにしよ! 



  くるりと振り返って、こちらを見る
  その顔には満面の笑みが浮かんでいる

  ね!と聞くその声には、僕が買うという確信で
  いっぱいで、居心地が悪い


knmc
 …しょうがないなあ! 
 ほんと?やった!! 
 ふふ、嬉しいなぁ…!! 



  そうやって表情をころころと変えるのを
  じっと見つめないように気をつけて、

  感じた少しの寂しさを、
 「 ほら、早くしないと時間なくなるよ 」
  なんて言って、誤魔化した


  彼女はすぐさまハッとして、
  ねえねえ早く!!と今度は僕が急かされる



 もー!時間なくなるよ 
knmc
 はいはい、落ち着いて 



  そんな会話をする僕らを、
  店員は不思議そうな顔をして見つめていた






 よし、じゃあ時間もそろそろだし 
 カフェに向かっちゃおー!
knmc
 何時だっけ、3時? 
 そう!おやつの時間!! 



  わざわざ3時に予約したのは
  それが理由だったのか、と今更ながらに理解した


  そういう細かいところはこだわるくせに、
  ところどころで大雑把なのは直せないのだろうか


knmc
 今度は迷子にならないでよ? 
 Googleマップがバグらなければね 
knmc
 やっぱり、機械に頼るんだ… 
 頼れるものは頼らないと!
 これ私の家訓だから覚えといてね 



  お昼すぎ、もうすぐでおやつの時間

  正午からは少し傾いた太陽の光が
  二人を暑苦しいほどに包み、影を濃くしていた



  この時間だけは、二人きりの観測所と同じように
  少し静かで、騒がしいときが過ぎていった













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