タッタッタッ……
私は、重たいリュックを背負いながらも家へと懸命にダッシュしていた。
「なんでっ…こんなに重いのっ? 宿題多すぎだよぉ〜」
リュックは持ち上げるのにも気合いを入れないと持ち上がらないくらい重い。なんで取っ手のところが取れないのかが不思議ってくらい。
だからいつもは走りなんてしないんだけどね。でも、今日は特別だった。
「だって…」
私は、タンっと足を蹴った。
「お姉ちゃんが、家にいるんだもんねっ!」
私のお姉ちゃんは大学生で、いつも寮暮らしをしている。今日は、実家に帰省してきたらしい。
私、今日お姉ちゃんに会ったら絶対LINEを交換するの! 前お姉ちゃんに会った時は、スマホを持っていなくて連絡手段が無かったから。
わざわざ両親を通してメールとか電話をするのって、はっきり言って面倒くさいし、…それに恥ずかしいじゃない?
お姉ちゃんは頼りになる。
私にとって、人生の先輩的なひとなんです。
「ただいま!」
青色のペンキで塗られた門を通れば、そこはもう私の家。
備え付けの花壇では、私が去年植えたタンポポの綿毛が、また綿毛になって揺れている。
「おかえり、紅莉」
家の裏の方からよく通る声がして、私は顔を上げた。
「お姉ちゃん!」
そこにいたお姉ちゃんは、記憶と違って更に垢抜けていて。
髪を茶色に染めて、髪の先を巻いているみたいだった。
「なんか、すごい綺麗」
私が褒めると、お姉ちゃんは『何言ってんの』と笑った。
「ホントだってば!」
私が頬を膨らませると、お姉ちゃんはニヤリと笑って髪をかきあげた。
「うふふふ」
中々認めてくれないお姉ちゃん。
うーん、のんちゃんもこんな気持ちだったのかなぁ…私、ホントに可愛くないから仕方ないんだけどねーっ?
「なんでそんなにオシャレしてるのー?」
私が聞くと、お姉ちゃんは唇を尖らせた。
「だってー、裕翔が……」
「ひろと?」
聞いたことのあるような名前のような気がして、私は眉をひそめた。
お姉ちゃんは、慌てたように恥じらった。
「あー…えっと、彼氏よ彼氏。紅莉の幼なじみのお兄ちゃん」
彼氏?
「彼氏って……い、いるのっ?!」
私は目を見開いて、のけぞった。
彼氏って、男子でしょ。男子にそんなに心を許せる人の気持ちは、まだ分かってないです。最近チョー久しぶりに男子と話しただけなので。
「ていうか…私の幼なじみって?」
私が問うと、お姉ちゃんは首を傾げて言った。
「覚えてないの? 5歳くらいの時に引っ越して行っちゃったけど、松原結翔くんよ?」
まつばら……?
「ばーか。どっかいけ」
心の中に、響いた声。
その言葉に、私は、ハッと目を見開いた。












編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。