苦さを紛らわすために勢いよく飲み込む 、粉状の薬 。
その正体は 、抑制剤 。
それは 、私の生活に欠かせないもの 。
この世界に 、男と女の他に α と β と Ω という性別が存在することが解ってから1世紀 。
α 。
生まれつき
容姿 、頭脳 、能力に秀でた特別な遺伝子を持つ 。
β 。
最も一般的な性別で 、
人口のほとんどがこれにあたる 。
Ω 。
絶滅危惧種であり 、
繁殖に特化した性で確実に α を産むことができる 。
数少ない絶滅危惧種の Ω だ 。
Ω という生き物は 、ただでさえ少ない α よりも
さらに数が少なく 、特別だ 。
また 、 Ω は性に特化しているため 、「 フェロモン 」という特有の匂いを出す 。
β や α はそのΩのフェロモンに釣られて「 運命の花嫁 」
なんて言われて もてはやされる 。
だからこそ、不自由だ 。
進路も 、仕事も 、恋人さえも 。
だから私は 、 β として生きる 。
Ω ということを隠し、平和に、平穏に 。
なんてことを呟きながら 、真新しく 、可愛らしい制服に袖を通す 。
今日は 、高校の入学式だ 。
私立実況高等学校 。それが 、私の通う学校 。
実況高校は 、エリートが集まるような学校だ 。
エリートだらけ 。
つまり _________
気をつけて 、 Ω ってバレないように 、平穏に 。
虹の目を隠す黒いカラコンと 、
少し地味に見える化粧をする 。
いざ 、入学式へ 。
目指せ 、平穏な β 生活 ‼︎












編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!