前の話
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春。
図書室には今日も静かな時間が流れていた。
本棚の間を歩く生徒たち。 窓から差し込む柔らかな光。
そして。
そこには一株の双子葉類が生息していた。
そして双子葉類の視界の先。
本棚の向こうから現れる大きな影。
生態
双子葉類とブロッコリーは図書室で遭遇すると高確率で会話を開始する。
観察例。
🥦「チビ」
🌱「分けろ」
🥦「無理」
🌱「ケチ」
研究者たちは、この二種が口げんかをしているのか仲が良いのか未だ結論を出せていない。
しかし一つだけ確かなことがある。
双子葉類は、ブロッコリーが図書室にいないと少しだけ元気をなくす。
もっとも、本人は認めないだろうが。
図書室には不思議な生態系が存在する。
本棚。
机。
貸出カウンター。
そしてブロッコリー。
本を返しに来た双子葉類は、本棚の横の椅子に巨大な緑色の物体を発見した。
正確には人間である。
双子葉類は席に荷物を置く。
ブロッコリーは本を閉じる。
いつもの流れだった。
特別な約束などない。
待ち合わせもしていない。
けれど。
図書室へ来れば、だいたいいる。
会話はだいたい中身がない。
でも不思議と続く。
本当に不思議である。
キーンコーンカーンコーン ___ …
昼休みの予鈴がなったようだ。
教室への帰り際。
双子葉類はふと窓の外を見る。
お昼頃の光が図書室の中を明るくしていた。
本棚の影が伸びる。
静かな時間だった。
双子葉類の顔が若干緩んでいるのに、きっと本人は気づいてないだろう。












編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!