第5話

動き出す英雄像
3
2025/09/28 06:25 更新
碧
夜の学校ってなんか
ワクワクするよな!
昼とは違う雰囲気の学校を見渡しながら
ワクワクしている。
昼とは違う静かな夜の学校。街灯の光が
ぼんやりと校庭を照らしている。

遠くで犬の遠吠えが聞こえる。
そのとき、校庭の端で何かが動く。

近づいてみると、それは二宮金次郎像だっだ。

碧が二宮金次郎像を観察していると、
突然像が動き出す。
碧
うわっ!!なんだよこれ!!
二宮金次郎が動いたぁぁ!?
動き出した二宮金次郎に驚いて
後ずさりする。
碧
すげぇ!
夜の学校ってこんなことも
起こるのかよ!
動き出した二宮金次郎はゆっくりと
碧に近づいてくる。

碧は驚いて後ずさりしようとするが、
足がもつれて転んでしまう。
二宮金次郎像
二宮金次郎像
よく来たね。
碧
うぉぉ!喋ったぁ!
足をもつれさせて転んだ碧を見下ろしながら
話す二宮金次郎を、見上げる。
碧
サインください!!
二宮金次郎像
二宮金次郎像
さいん?いいよ。
サインをしてほしいという碧のお願いを
聞いて、二宮金次郎は懐からサイン用紙と
ペンを取り出してサインをしてくれる。
サインを書いてくれた二宮金次郎を見て
目を輝かせる。
碧
やったー!
ありがとございます!!
二宮金次郎像
二宮金次郎像
どういたしまして。
そして二宮金次郎はまた歩き出し、
校庭の隅へ消えていく。

碧は二宮金次郎が消えるのを見届けてから、
学校の中に入っていく。
碧
この時間帯に学校にいるって
なんか悪いことしてる気分に
なるな。
そのとき、前の曲がり角から誰かが歩いてくる。
人体模型
人体模型
こんばんは。
碧
おわっ!
夜の学校って人体模型も
動くのかよ…。
なんか夜の学校楽しすぎるな。
人体模型
人体模型
私、人間に会いに来たの。
碧
え?そうなの?
俺に会いに来たの?
それで、俺に何の用?
人体模型
人体模型
あなたの脳を見せてほしいの。
碧
ぎゃー!!頭取られるー!!
人体模型
人体模型
取らないわよ、冗談。
じゃあ、私はこれで。
バイバイ。
人体模型は踵を返して去っていく。
碧
はぁ…冗談ってわかってるけど
マジで焦った…。
この学校にはまだ何か
いるんだろう…探検してみよ。
学校内部を探検する碧。

音楽室、美術室、理科室などを順番に見て回る。

どこもかしこも静かで人がいる気配はない。

そのとき、後ろから誰かがついてくるような
足音が聞こえてくる。
妖怪女学生
妖怪女学生
私たち、同じ方向に行ってるね。
碧
ん?どちら様ですか?
ついてくる足音に気づき後ろを振り返って
声をかける。

振り返ると、自分の制服と同じ制服を
着ている女子生徒がいた。
妖怪女学生
妖怪女学生
私、道に迷ったの。
一緒に行ってくれない?
碧
あ、うん。良いけど…
何処に行きたいの?
妖怪女学生
妖怪女学生
家に帰りたいの。
でも道がわからなくて。
碧
あ、そうなの?
それなら俺が校門まで案内するよ。
妖怪女学生
妖怪女学生
でもその前に、一つ聞いてもいい?
碧
ん?聞きたいことって何?
妖怪女学生
妖怪女学生
君の魂、おいくら?
碧
え?何言ってんの…?
頭おかしいんじゃない?
碧が逃げようと背を向けた瞬間、女子生徒が
素早く碧の肩を掴む。

そして碧を自分の影の中に引きずり込む。
妖怪女学生
妖怪女学生
なんで逃げるの?
少し遊ぼうよ。
君の魂をいただく前にね。
碧
や、やめろ!離せ!!
肩を掴まれて影の中に引きずり込まれる
感覚に恐怖する。

抵抗するも力が強く振り払えない。
妖怪女学生
妖怪女学生
抵抗しないで。
すぐに終わるから。
彼女の声が響き渡ると同時に、影から伸びた
黒い手が碧の足首を掴む。
碧
う、うわぁぁぁぁぁ!!!
足首を掴まれて完全に影の中に
引きずり込まれてしまう。
影の中は完全な暗闇だった。
一瞬の静寂の後、碧の目の前にぼんやりと
光る二つの点が現れる。

それは女子生徒の目だった。
妖怪女学生
妖怪女学生
そんなに怖がることはないよ。
少し遊んであげるだけだからね。
碧
ひっ…来るな!!
恐怖で動けずに後ずさりする。

しかしいつの間にか影に囲まれており、
前には女子生徒が立っている。
女子生徒は碧に向かって一歩ずつ
近づいてくる。

彼女の顔には笑みが浮かんでおり、
目は三日月のように細長く曲がっている。
妖怪女学生
妖怪女学生
心配しないで。
すぐに楽にしてあげるから。
彼女は手を上げて碧の顔を撫でる。
碧
ひっ…嫌だ!!やめてくれぇ!!
顔を撫でられて悲鳴を上げる。

そして気を失った。
気を失った碧を女子生徒はしばらくの間
見つめている。

そして碧の魂を抜き取ろうとするかのように
手を碧の胸に当てる。
妖怪女学生
妖怪女学生
魂の味見をさせてね。
すると二宮金次郎像が現れ、女子生徒を
殴り飛ばす。
二宮金次郎像
二宮金次郎像
おい、お前。
その人間に何してるんだ?
妖怪女学生
妖怪女学生
あら、何よ、急に?
痛いじゃない。
二宮金次郎像
二宮金次郎像
お前は人間じゃないな?
妖怪かなんかか?
妖怪女学生
妖怪女学生
あんたには関係ないでしょ?
それに、なんで人間なんかを
助けるの?
二宮金次郎像
二宮金次郎像
俺は人間を守るのが仕事だからな。
お前みたいな悪いやつから
人間を守るのは当然だ!
妖怪女学生
妖怪女学生
ちっ、面倒な奴。
今日は厄介なことに
巻き込まれちゃったわね。
覚えておきなさい!
彼女は逃げ出す。
女子生徒が去っていくと二宮金次郎像は
碧を揺さぶって起こす。
二宮金次郎像
二宮金次郎像
おい、大丈夫か?立てるか?
碧は二宮金次郎像の助けを借りて
なんとか立ち上がる。

二宮金次郎像は安堵のため息をつく。
二宮金次郎像
二宮金次郎像
ふぅ、間一髪だったな。
もう少し遅かったら、あいつに
魂を全部持っていかれるところ
だったぞ。
碧
あ、ありがとうございます…
助けてくれて…
二宮金次郎像
二宮金次郎像
なに、当然のことをしただけだ。
人間を守るのは俺の仕事だからな。
碧
そういえば、二宮金次郎像さんは
どうしてここに…?
二宮金次郎像
二宮金次郎像
俺は毎晩学校を
巡回しているんだよ。
悪いやつらが学校に
近づかないようにな。
碧
そうだったんですね…
これからは夜に学校に
来るのはやめます…
二宮金次郎像
二宮金次郎像
いや、君が夜に学校に
来なければならない状況も
あるだろう。
今日のようなことが二度と
起こらないとは限らないからな。
碧
はは…そうですね
また何かあったらお願いします…
そのとき、遠くから足音が聞こえてくる。

二宮金次郎像は素早く碧を自分の後ろに隠す。
二宮金次郎像
二宮金次郎像
また何か起きたようだな。
今度は何だ?
足音の主は、包丁を持った生徒だった。
振られた奴
振られた奴
うぉおおお!
この前俺を振ったやつを
見つけて殺してやる!
生徒は錯乱した状態で叫びながら
包丁を振り回している。

二宮金次郎像は碧をさらに強く抱きしめながら
戦闘態勢を取る。
二宮金次郎像
二宮金次郎像
こいつはまずいな。
君、俺の後ろから絶対に動くなよ!
包丁を振り回す生徒を前に、二宮金次郎像は
立ち向かう。
振られた奴
振られた奴
邪魔だどけえぇぇ!!
二宮金次郎像は生徒の包丁を持つ手を掴む。
二宮金次郎像の握力に生徒は包丁を落とす。

二宮金次郎像はすかさず生徒の腹部に
強烈な蹴りを入れる。
二宮金次郎像
二宮金次郎像
はっ!
生徒は吹き飛んで床に倒れる。
しばらくして、正気に戻る。
振られた奴
振られた奴
あれ…俺、なんで
こんなところに…?
二宮金次郎像は碧に視線を向けながら言う。
二宮金次郎像
二宮金次郎像
ふう、これで大丈夫だ。
さあ、もう家に帰ろう。
碧
あ、はい…帰ります…
色々ありがとうございました…
二宮金次郎像に深く頭を下げて挨拶をして
学校を出る。
家に着いてベッドに横たわり、今日
あったことを思い返す。
碧
そういえば…人間を守るのが
二宮金次郎像さんの仕事
って言ってたけど…
二宮金次郎像の言葉が蘇る。

"人間を守るのが俺の仕事だ。"
*その言葉を思い出し、改めて二宮金次郎像に
感謝する。
碧
やっぱり…二宮金次郎像さんは
すごい人だったんだなあ…



その直後、大切なことを思い出す。


碧
あっ!忘れ物…………!?
取ってくるの忘れてた……!!!

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