第44話

人魚姫様
16
2024/03/11 11:50
俺の住んでいる村には、変なお祭りがある。
その名も、「人魚姫祭り」
年に一度だけ、「人魚姫様」が来るお祭りだが、ここ数年で代が著しくかわり、今の代、17代目の人魚姫様は、一回も見たことがない。
小さい頃は、よく行っていたのだが、年を重ねていくにつれて、たかだか祭り、そう思うようになっていき、一度もいっていない。
それと、行っていない理由がもう一つ。
みるく
みるく
『うり!明日、人魚姫祭りだけど、絶対来たらだめだからね!』
幼馴染みのみるさん。天使の羽のように真っ白でふわふわの髪を、いつも三つ編みに結っていて、お揃いのネックレスをつけている。
話せないらしく、いつも筆談をしている。
いつもいつも、人魚姫祭りに来るなと俺に伝えてくる。
いつもなら、行かない。
でも、今年は別だ。
クラスの友達が、こんなことを言っていた。
「今年は、珍しい催し物があるんだって!」
怖いもの見たさとか、物珍しさとかから、俺は今年、人魚姫祭りに行くことにした。
……一人で。
明日は人魚姫祭り。今夜は店も早くに閉まり、明日はほとんどの店が休業。
珍しい催し物は、夜の8時頃からやるらしい。
俺は、幼馴染みと別れ、家へと向かった。
次の日 
夜七時五十分ごろ
もうそろそろ、例の催し物が始まるっぽい。
さっき屋台で買ったたこ焼きを一つ頬張って、催し物のあるらしい海岸へ向かう。
海岸へついた。もう催し物は始まっている。
さっきあったクラスの友達によると、催し物とは、数年に一度、人魚姫様の本当の姿が見れる、というものらしい。
いつもの祭りでは、人魚姫様は来ているが、人間に紛れて、祭りを過ごしているらしい。
…どんな姫だよ
人混みを通り抜け、波打ち際へと来た。
ちょうど人魚姫様は潜水中。
少したつと、人魚姫様が、海岸から少しだけ離れた岩の近くから顔をだした。
水に濡れてペタッとした、天使の羽のように真っ白な髪。
見たことがないほど、すんでいる真っ黒な目。
とても美しく、吸い込まれそうな人魚姫様。
…の首もとに、何か光るものがあった。
…お揃いのネックレス。
黄色い、貝殻のような形をした飾りがチャームポイントの、銀色のネックレス。
…今、幼馴染みが来るなと言っていた理由がわかった。
とある古い本に、こんなことが書かれてあった。
…人魚姫様の正体を知った者は…
姫様と同じように…人魚となってしまう。
…みるさん…いや、人魚姫様がこちらに気がついたようだ。
人魚姫様はすぐに海に潜って行ったが、時既に遅し。
パキパキと、変な音を周囲に響かせて、俺の体に鱗が出てきていた。
息が苦しい。酸素が足りない。
何もわからなくなった俺は、誰かに引っ張られ、海に入っていった。
ゴボゴボとなる、泡の音。
目を開けてみると、下半身が魚になった俺と、人魚姫様が目に飛び込んできた。
口パクで、何か伝えようとしている。
少しずつ聞こえてくる人魚姫様の声。
みるく
みるく
どうして来たの
そう言っているように聞こえた
友達から言われた催し物が気になったと、返事をする。
ふと、暖かい水があたったような気がした。
ぎゅぅっ…と、強く抱き締められる。
人魚姫様は、耳元で何かを囁き、俺の頬にキスをした。
かあっ、と、頬が熱くなる。
それを気にする様子もなく、人魚姫様は、俺の手をひいて、沖の方へ泳いで行く。
岩場へと来た。
人魚姫様が顔を出した。
俺も、続いて顔を出す。
海岸の人は、人魚の王子様だって、騒いでる。
そして、今年の人魚姫祭りは、幕を閉じた。
気が向いたら、続編作ります。

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