しばらくすると女性が歩きながら
とブツブツ言った。拗ねているようだ。それを見た少年は小さく頷きつつ、心の中でまだ戒心を解かずにいた。
そんなことを思いつつ彼は彼女と共に夜の闇を進んでいった。
しばらくして気がつくと二人は街の賑やかな喧騒から隔絶された暗闇を歩いていた。少年は、時折後ろを振り返りながらも、彼女の後をついていった。彼の心の中では戒心がぐるぐると渦巻いており、彼女の背中を疑いの視線で見つめ続けた。
彼は何度も自分に問いかけた。
「どうしてついて行かなきゃいけないんだ?1人で逃げ切れるはずだ」
と。しかし、体の痛みと疲労が、足枷のように重く引っ張っていた。彼はそんな自分を今は逃げ切ることが最優先だ、彼女を盾にできるかもしれないと、心の中で言い訳する。
そんなことを考えていた。見慣れない石畳の暗い路地を行先もわからずに歩く。この街にこんなに入り組んだ道があったのかと思うほど果てしなく続くようだった。さて、四半刻程歩いた頃だろうか。
おもむろにニーナが呟いた。
今までたくさんの盗みを働いてきた少年が気配を感じ取ることすらできない。そんな事実を突きつけられあまりに唐突な言葉に理解が遅れた。この女嘘をついているのではないか...?と思うほどに。
物思いに耽ってる少年を見て、ニーナは言葉を発すると同時に少年の尻を蹴りあげる。
少年は前によろめきながら走り出した。
後ろからそう言ったニーナは少年の横を音もなく抜かしていく。少年はわけもわからず必死に後を追った。彼女は暗い小道を迷うことなく、左、右、右、左、三叉路を直進、右、右、左と言ったように走り抜けてく。そのうち、彼女の言葉が嘘では無いことがわかった。少年にも感じ取れる気配が音も無く近づいてきたのだ。だが姿は見えない。ただ近くに"何かがいる"。少年は不安に駆られた。いつも昼間に見ているような小太りの警察ができるような動きじゃない。更に問題なのが感じ取れる気配が1つでは無い、ということだ。周りに少なくとも3つの得体の知れない何かが迫ってきている。今までたくさんのチェイスをこなして来た少年は本能的に察知する。












編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。