翌朝。
事務所に来た七瀬は、いつも通り仕事を始めていた。
その言葉に、七瀬は少しだけ目を伏せた。
そう言って、七瀬は資料を持ち上げた。
その瞬間。
視界が揺れる。
一歩踏み出す。
身体が大きく傾いた。
目黒と深澤が咄嗟に支える。
けれど、七瀬はもう自分の足で立てなかった。
小さく呟いたところで、七瀬の力が抜ける。
9人全員が動揺する中、七瀬は目を閉じたまま動かなかった。
そして――
何度謝っても。
何度名前を呼んでも。
七瀬は目を覚まさなかった。
それから数日。
七瀬がいない事務所は、どこかおかしかった。
誰かがミスするたびに、全員が黙る。
そして――
9人は、今まで当たり前のように頼っていた存在の大きさを思い知らされていた。
そして今日も――
七瀬は、まだ目を覚まさない。





















編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!