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僕には大切な人がいる。
いや、大切な人がいた。
僕は1人っ子だった。
周りに歳の近い子はいなくて、ずっとお父さんとお母さんが遊んでくれていた。
僕が小学生になった春、お父さんは病気にかかってしまった。
その日は、学校から帰ってきてお母さんと一緒にお見舞いに行った。
僕の父親は微笑んだ。
お父さんの笑顔が大好きだった、けれどきっと、この時の笑顔は本当の笑顔ではなかった。
~2年後~
小学3年生になって、学業が忙しくなってきた。
けれどできる限りお見舞いは行った、お父さんに会いたかったから⋯。
この日も大好きなお父さんの顔を見に来た。
2年経った今でも、お父さんは1番最初にこの言葉を言う。
きっと口癖なんだろう。
僕はくるりと背を向け、「じゃあね!」と言った。
この日は友達と遊ばなきゃいけないから、早く行かないと⋯、そう思っていた。
~次の日~
最近僕に声をかけてくれる男子生徒と一緒に勉強していた。
昨日は一緒に遊んだから今日は流石に勉強しようと言われたからだ。
その時、扉が大きな音を立てて開いた。
先生に手を引かれた。
何も考えられない、体が動かない、
なんで?どうして⋯っ?
分からないよ⋯。
~in 病院~
先生から聞いた言葉、「お父さんの容体が大変な状態です」と。
僕は小学3年生ながらも、母親が看護師をしているためその言葉の意味は分かった。
ただ、「お父さんの命が危ない」ということだけ、勘づいてしまった。
元々色白だった肌が、もっと青ざめていた。
辛そうに咳き込む父親はそのまま手術室へと連れて行かれた。
お母さんがたくさんの涙を流す。
「不甲斐ない母親で、ごめんね⋯。」と僕に言った。
当時の僕は、まだ幼く、その言葉を理解できなかった。
~さらに2年後~
今日が、お父さんが亡くなってから2回、四季が廻った。
2年前、緊急で手術をしたが、間に合わず僕の父親は命を落とした。
それでも、母親は僕を女手一つでここまで育ててくれた。
あれから、僕に涙を見せたのは一度もなかった。
けれど、夜中、毎夜毎夜泣き声が聞こえる。
お父さんのお墓の前にしゃがみ込む。
近くにあった桜の花びらをほうきで軽くはいた。
その後に持ってきていた水をかけた。
お墓の汚れをスポンジで拭き取りながら、そう尋ねる。
返事は返ってこない、普通そうだろうけど⋯、それが僕にはすごく辛かった。
急に声をかけられたからなんだと思い後ろを向いた。
そこには僕よりもちょっとだけ年上っぽい男性が立っていた。
今の季節にはあまり合わない格好をしていた。












編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!