- 翌日 -
安くて可愛いアクセサリーが売られているお店で、優は2つのイヤリングを手に取り真剣な顔をして見比べていた。
優はそこまでお金を持ってきていない。お土産代や東京へ戻るためのお金もあるため、かなりカツカツな状態だ。
一方、紘太はあまりお土産を買わない。買うにしても寮のメンバーくらいだ。だから優と違ってそこまでお金に困っていない。
だから素直な優しさから、優が悩んでいるアクセサリーのひとつを買おうか提案した。しかし優は少し申し訳なさそうな表情になってしまう。
しかしここで断るのも紘太に申し訳ないと感じてしまった優は、立替という提案をした。その提案を、彼は素直に受け入れる。
優が左耳につけているイヤリングと紘太がつけているピアスはどちらも雫から貰ったものだった。
そしてそのふたつのアクセサリーは、このお店で取り扱われている。
だからふたりはここで雫の墓参りに置くアクセサリーを選びに来ていたのだ。
ふたりは店を出て、駐車場へと向かって歩いていく。
冷たい風が頬を撫で、自分達より先に向かっていく。
今日は大晦日。新しい1年へ移ろぐ前の日である。
街も賑わっており、改めて今年の終わりを感じさせる。
そんな中、話題に出た進級の話。
ふたりはもうすぐ中学2年生になる。しかし雫は、小学6年生のまま変わることは無い。
ふたりもそれに気が付いた。だから、ふたりの空気には沈黙が流れてしまう。
数秒経った後、紘太はその場に立ち止まって優の方を振り返る。
紘太の言葉に、優は一瞬だけ目を見開いた。
そしてその後、1呼吸置いて優しく微笑む。
ふたりが雫にやれること。それは空の上にいる雫に、今の人生を楽しんでいるふたりの姿を見せることだけなのだ。
そのままふたりは紘太の母が運転する車に乗り、雫の墓が置かれている場所へと向かう。
- 墓地 -
数十分後。
車から降りたふたりは花や先程買ったアクセサリーを持って、雫の墓の前にしゃがんでいた。
アクセサリーの箱を墓の前に置き、優しく笑いながら墓を撫でた。
その間に紘太は花を添える。
花を添えたことない紘太は、簡単なことのはずなのに思った以上に苦戦してしまっていた。その様子が面白かったのか、優はくすくすと笑う。
紘太は優の言う通り、かなり不器用だ。それは本人も自覚している。
一方、優はそこまで不器用という訳では無い。楽器も演奏出来るし絵もうまい。苦手なことは計画を立てることくらいだ。
返答が帰ってこないなんてことはわかってる。でも、つい癖で誰にもいないところに向かってそう質問をしてしまった。
冷たい風がもう一度頬を撫でる。辺りは一瞬で静寂に包まれた。
ふたりが立ち上がり、雫の墓に背を向けて歩き出した時。
『 優ちゃんの言う通り、そこがこうくんのいいところだって私も思うなー!! 』
確かに、そんな声がどこからか聞こえてきた。
その声に反応したふたりは、思わず振り返ってしまう。
でもそこには誰もいない。ただ添えた花がゆらゆらと揺れているだけだった。
ふたりは顔を見合せたあと、もう一度同じ話題で会話を始めた。
先程よりも更に優しく、楽しそうな笑顔で。














編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!