今日殺した人数は、37人。
そのうち不幸にしてから殺せたのは15人。
自己ベスト更新だ。
さて、暇だなと、俺はそっと呟いた。
もうあたりは朝だ、あまり下手に動きたくはない。
今はだいぶ幻聴や幻覚が落ち着いてきてるし、のんびりしたい。
そういえば、この前ちょうど天界にまで飛べるようになったんだっけか?
暇だし、行ってみようか。
そう思い俺は羽を生やして、ある程度鳥のような体を作って空へと羽ばたいた。
数十年経つと、街の様子も随分と変わった。
高いビルも増えて、人々は楽しそうに歩いていた。
ちょうどその時、天界への入り口を見つけ、そこに俺は入った。
雲の上にやってくると、そこには美しい景色が広がっていた。
小柄で華奢な天使たちが集う中央の広場。
雪のように輝く立派な西洋風の城。
奥に見える色鮮やかな花畑。
俺は思わず声をあげた。
そんな綺麗な場所の中で、俺は左にある建物の中に闇を感じた。
なんとなく、そんな気がしたのだ。
高いところに窓があったので、そっと覗いてみた。
何やら天使が地面の魔法陣に向かって何かを唱えている。
なんだか、怪しい雰囲気が漂っている。
もしかして、訳ありなんじゃないか?
そう思った時、魔法陣が光り始めた。
なんだあれ、と好奇心がくすぐられた俺は中に入ってみた。
窓が開いていたのだ。
魔法陣はすぐに光をなくしたが、そこでちょうどよく俺は中に入れた。
目の前の天使は目をキラキラさせながら何やら必死そうな様子で俺に語りかける。
コイツ何言ってんだ………?
もしかして悪魔を召喚する魔法でもやってたのか?
見るからには失敗したっぽいが………なんか、勘違いされているらしい。
ならちょうどいい、コイツを堕としてやろう。
俺は相手に名前と事情を聞くことにした。
友人を蘇らせる?バカなやつだ。
まぁ代償はお前が不幸になること、とでも思っておこうか。
…鼻からお前の願いとか聞くつもりはないけどな。
敬語だと兵隊を思い出すからか?
なんか、敬語は嫌いなんだよな。
改めて見てみると結構可愛らしい天使である。
金髪で、目が水色で、真っ白いドレスを着飾っている。
黄色く光る天使の輪っかも中々立派だ。
もしかして、結構上位の天使だったりするのだろうか?
禁忌の魔法を使ってまで友人を蘇らせたいなんて……相当大事な友人だったんだろうな。
…いいなぁ。
その5日の間に俺は、コイツを堕とす準備をする予定だ。
堕とすにはちゃんとした理由がないと世間に不審に思われる。
さぁ…………
…………どうしてくれようか。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。