第5話

第五話
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2025/08/28 10:57 更新

出産から約三週間――…
すっかり敦の体調も治り、元気な状態。

中島敦と中原中也の間に産まれた生命いのち
名は「 ひなた 」。名ずけたのは陽を産んだ張本人、中島敦。

今日は、武装探偵社の面々が赤ちゃんに会いに来る日だった。

離れの和室には、陽だまりが落ちている。

敦は柔らかな色のブランケットを膝に掛けて座っていた。
其の直ぐ傍には、中也が娘を抱いて座っている。

そして、最初にやって来たのは――…

襖をスッと開け、姿勢を正したまま入室した国木田独歩。
国木田 独歩
敦、まずは……出産、おめでとう。
国木田 独歩
お前が無事だった事を心から喜ばしく思う。

国木田の言葉に敦は嬉しそうに微笑み乍、国木田に云う。
中島 敦
ありがとうございます、国木田さん……!

敦の感謝の言葉に少し国木田が微笑む。
国木田 独歩
…其れにしても、実に想定外だ。
国木田 独歩
男が妊娠・出産するなど、理想手帳にも書いていない事態だったが……

国木田は(何故か)真面目な顔で云った。
中原 中也
そりゃ然うそうだろうな。

国木田の言葉に中也がすかさずツッコミを入れる。
国木田 独歩
…だが、目の前にこうして命があるのなら、理屈は不要だ。
国木田 独歩
敦、善くやった。

静かに微笑む国木田。
其の目にはほんのわずか、潤みすら浮かんでいた。

…然して、国木田に続き、入って来たのは――…
江戸川乱歩。
江戸川乱歩
おー!赤ちゃんだ!可愛いね〜!
真っ先に抱っこをせがみ、子供の様なきらきらとした目で腕を差し出す乱歩。

中也は明らかに乱歩を警戒したが、
敦が「大丈夫ですよ、きっと。乱歩さんなら、」
と笑って中也に云った為、しぶしぶ了承。
江戸川乱歩
ふふん、僕は抱っこの仕方も完璧なんだよ?
江戸川乱歩
だって僕は"名"探偵なんだから!

乱歩は胸をはって自信満々に云った。

然して、乱歩の腕の中に陽が抱っこされた瞬間…

乱歩はさっきの様子とは全く違い、とても驚いな様な表情で陽を見つめる。
江戸川乱歩
…小さい、…柔らかい、…軽い…

何時もの様子からは絶対見られない様な乱歩。

其んな中、乱歩の腕の中にいる陽は、乱歩の腕の中で安心したのか、にっこりと笑っている。

敦はにっこりと微笑んで乱歩と陽を見つめ、中也は
「未だ俺にも笑ッてくれてねェのに…」と、父親あるあるのショックを受けていた。

ポートマフィア内でも恐れられている五大幹部の内一人、中原中也。

其んな中也がこんな姿だと、ポートマフィア部下はどんな反応をするのか、気になるところだ。

国木田、乱歩に続き、入って来たのは――…与謝野晶子。
与謝野 晶子
ふふ、善い子に育つンだよ?

医療担当として立ち会った与謝野は、既にすでに
“親戚のお母さんポジ”に近い。

赤ちゃん用のベビー服やガーゼを幾ついくつも持参。

其れに、抱っこの仕方までも完璧。

最早もはや凄いという気持ちを通り越して尊敬までしてくる。
与謝野 晶子
少し痩せ気味だから、市販のミルクだけじゃ足らなかッたらアタシに云いな。
与謝野 晶子
調合して特製ミルク作るから。

凄い事をサラッと云った与謝野。

今の与謝野晶子は母性に溢れている。
中原 中也
凄ェ通り越して怖ェ…。

与謝野の言葉に少しビビっている中也。
中島 敦
ぼ、僕も少し怖い…… ((小声

二人の言葉が聞こえたのかは知らないが、与謝野が口を開く。
与謝野 晶子
何か云ッたかい?

少し圧をかけて二人に云う与謝野。
中原 中也
な、何でもねェ。
中島 敦
な、何でもありません!

続いてやって来たのは――…宮沢賢治&谷崎潤一郎。
谷崎 潤一郎
…あの、ほ、本当に、おめでとう敦くん…!、

何故か少し照れた様な様子で敦にお祝いの言葉を掛ける谷崎兄。

少しだけ陽を見つめた後、静かに呟いた。
谷崎 潤一郎
うわぁ、…ちっちゃ、…

続いて、賢治が本当の中学2年生の様な様子で、陽に近寄った。
宮沢賢治
うわぁぁ…!ふわふわです、…幸せの匂いがします!!

谷崎兄は終始、顔を赤らめて直視出来ず、斜めからそっと見るだけ。

賢治は「手触りが雪うさぎみたいですね~!」と笑い云い乍、無邪気に頬を寄せていた。
中島 敦
け、賢治くん、くすぐったがってるかも……!

と、少し心配し乍賢治と陽を見つめる敦。
中原 中也
辞めねェと泣くぞ……

案の定、陽が小さく「…、ふぇ……、」
と泣き声を漏らし、賢治は飛び退いた。
宮沢賢治
ご、ごめんなさーいっ!

最後に、静かに部屋に入って来たのは社長福沢諭吉だった。

敦は慌てて立ち上がろうとしたが、社長が手を上げて制した。
福沢諭吉
無理をするな。…お前の強さは、既にこの命が証明している。
 然して、陽を一瞥したのち、僅かに目を細めて云った。
福沢諭吉
…敦。お前はもう、ただ"守られる者"ではない。
福沢諭吉
守るべきものを得た者だ。今後も、命を護る者として生きろ。

社長の言葉に敦は涙を堪えながら、しっかりと頷いた。

其の日の午後。

皆んなが帰った後、中也はうつ伏せに寝転がる敦の背を撫で乍呟いた。
中原 中也
…探偵社の連中も、まァ悪くねェな。
中原 中也
陽も少しだけ慣れたみてェだ。

中也の呟いた言葉に反応し、敦が少し微笑んで口を開く。
中島 敦
!…はい、こんなふうに、受け入れてくれて、すごく…救われました。

陽は、木製のゆりかごの中で、小さく息をついて眠っていた。

まるで本当の“家族”の様な、温かい空気と安心感が其処そこにあった。



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中島 敦
ちなみに、鏡花ちゃんと太宰さん、ナオミさんがいないのはそれぞれ依頼があったかららしいです!

泉 鏡花
…私も、陽に会いたかった。

谷崎 ナオミ
わたくしもですわ!兄様だけ狡い~!!

太宰治
もちろん私もさ!こんなに可愛い陽ちゃんと毎日会えるなんて!!蛞蝓中也のくせに…ぐぬぬ…

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