出産から約三週間――…
すっかり敦の体調も治り、元気な状態。
中島敦と中原中也の間に産まれた生命。
名は「 陽 」。名ずけたのは陽を産んだ張本人、中島敦。
今日は、武装探偵社の面々が陽に会いに来る日だった。
離れの和室には、陽だまりが落ちている。
敦は柔らかな色のブランケットを膝に掛けて座っていた。
其の直ぐ傍には、中也が娘を抱いて座っている。
そして、最初にやって来たのは――…
襖をスッと開け、姿勢を正したまま入室した国木田独歩。
国木田の言葉に敦は嬉しそうに微笑み乍、国木田に云う。
敦の感謝の言葉に少し国木田が微笑む。
国木田は(何故か)真面目な顔で云った。
国木田の言葉に中也がすかさずツッコミを入れる。
静かに微笑む国木田。
其の目にはほんのわずか、潤みすら浮かんでいた。
…然して、国木田に続き、入って来たのは――…
江戸川乱歩。
真っ先に抱っこをせがみ、子供の様なきらきらとした目で腕を差し出す乱歩。
中也は明らかに乱歩を警戒したが、
敦が「大丈夫ですよ、きっと。乱歩さんなら、」
と笑って中也に云った為、しぶしぶ了承。
乱歩は胸をはって自信満々に云った。
然して、乱歩の腕の中に陽が抱っこされた瞬間…
乱歩はさっきの様子とは全く違い、とても驚いな様な表情で陽を見つめる。
何時もの様子からは絶対見られない様な乱歩。
其んな中、乱歩の腕の中にいる陽は、乱歩の腕の中で安心したのか、にっこりと笑っている。
敦はにっこりと微笑んで乱歩と陽を見つめ、中也は
「未だ俺にも笑ッてくれてねェのに…」と、父親あるあるのショックを受けていた。
ポートマフィア内でも恐れられている五大幹部の内一人、中原中也。
其んな中也がこんな姿だと、ポートマフィア部下はどんな反応をするのか、気になるところだ。
国木田、乱歩に続き、入って来たのは――…与謝野晶子。
医療担当として立ち会った与謝野は、既に
“親戚のお母さんポジ”に近い。
赤ちゃん用のベビー服やガーゼを幾つも持参。
其れに、抱っこの仕方までも完璧。
最早凄いという気持ちを通り越して尊敬までしてくる。
凄い事をサラッと云った与謝野。
今の与謝野晶子は母性に溢れている。
与謝野の言葉に少しビビっている中也。
二人の言葉が聞こえたのかは知らないが、与謝野が口を開く。
少し圧をかけて二人に云う与謝野。
続いてやって来たのは――…宮沢賢治&谷崎潤一郎。
何故か少し照れた様な様子で敦にお祝いの言葉を掛ける谷崎兄。
少しだけ陽を見つめた後、静かに呟いた。
続いて、賢治が本当の中学2年生の様な様子で、陽に近寄った。
谷崎兄は終始、顔を赤らめて直視出来ず、斜めからそっと見るだけ。
賢治は「手触りが雪うさぎみたいですね~!」と笑い云い乍、無邪気に頬を寄せていた。
と、少し心配し乍賢治と陽を見つめる敦。
案の定、陽が小さく「…、ふぇ……っ、」
と泣き声を漏らし、賢治は飛び退いた。
最後に、静かに部屋に入って来たのは社長だった。
敦は慌てて立ち上がろうとしたが、社長が手を上げて制した。
然して、陽を一瞥した後、僅かに目を細めて云った。
社長の言葉に敦は涙を堪えながら、しっかりと頷いた。
其の日の午後。
皆んなが帰った後、中也はうつ伏せに寝転がる敦の背を撫で乍呟いた。
中也の呟いた言葉に反応し、敦が少し微笑んで口を開く。
陽は、木製のゆりかごの中で、小さく息をついて眠っていた。
まるで本当の“家族”の様な、温かい空気と安心感が其処にあった。
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編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!