ドミナside
…そういえば思い出したことがあった。
「僕はここに来る一個前の異世界で声を聞いたんだけど。2人は?」
そう、口にした問いに先に解を出したのはシャルルだった。
「私もだ。確か、」
「「「____をよろしくね」」」
驚いた。僕を含めた3人がバラバラの異世界にいたのに。
声の特徴も一緒。
少なくとも、僕らをここに連れて来たのは人じゃ無いのではないだろうか。
名前も知らないやつを「よろしくね」と言われても、誰なのかも、どうすればいいのかも知らない。
話すことが無くなり、暫し沈黙が流れる。
レヴィが言い出した。
「コイツはいつになったら起きるんだ。」
そういえばかれこれ30分近くここにいることに気付いた。
ここにいたのは、魔法不全者が起きるのを待っているからだ。
No side
Q.知らない奴が突然泣き出したらどうする
A.どうすればいいか分からなくて反応に困る
魔法不全者は、涙の雨をいきなり降らせ始めた。
ドミナもシャルルもオロオロしているだけで、何もできない。
レヴィは、オロオロしてないだけで、何もしていないが。
ドミナもシャルルもオロオロしているだけなので静かなお陰でレヴィは魔法不全者がぶつぶつと何かを喋っていることに気づいた。
レヴィが耳を澄ますとドミナとシャルルもそれに気付いたらしく、3人揃って言葉に耳を傾けていた。
「どーして?」
魔法不全者はその言葉を何でも聞きたがる子供のように独り言で使っていた。
レヴィ達は何も知らないから答えることも出来ないのに。
「おねがいだから、ままぁ、ぱぱぁ。あなたの名前(ひらがな)、がんばったよ」
「あふろでぃてもおおきくしたから、ね?」
「かえってきて…」
「おねがいだから…だれかわたしをほめて?」
「あなたの名字さんだからはもういやなの。」
寝言で有りながらぽつりぽつりと大粒の涙とこぼすそれは、頑張ったながらも褒められず利用されたドミナの様だ、と筆者の皆様は思ったのではないだろうか。
ここでは原作を捻じ曲げて、シリルさんとすれ違っただけなので、ドミナにはその辛さが分からなくなっている。
原作が捻じ曲がったここで、その弊害が出てしまった。
シャルルも、ドミナも、レヴィも。
ただ家族が好きなだけ。
それだけで原作がああなってしまったのだろうか。
家族が好きな自分たちが、彼女の辛さを分かることができるだろうか。
大切な家族を失った彼女を。
彼女はピクリと眉を動かし、瞼を開く。
そして目の前にいるシャルル達3人の顔を認識して、どうしてこうなったのかを必死に思い出す。
推しの目の前で失態を晒すわけにはいかないといかんばかりに。
彼女は気付いていない。
彼女はすでに彼女にとっての失態を晒しているのだ。












編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。