第361話

怪盗たちの日常
8
2025/10/25 04:54 更新
六葉
六葉
っあぁ、もう!
虫使いが呼び出した大量の蜘蛛を、六葉はバク転で躱していく。すると、逃げた先に発勁の構えをとった理玖がいた。六葉は咄嗟に閃光弾を地面に落とし、逃げる暇を作る。
六葉
六葉
(…情報聞くのは無理そうだし、殺すか)
この2人を生かしておく理由はない。だからこそ六葉は本気の殺意へ切り替え、虫使いの足元にある物を投げた。虫使いの視線は自然とそちらに向く。
六葉
六葉
食らっとけアホ!
刹那、それが轟音と共に爆発した。男の片足は吹き飛び、酷い火傷と裂傷を負う。しかし悪魔だからなのかニールのせいなのか、その傷は再生の兆しを見せた。
六葉
六葉
(ほんっとダルい…!)
互いに再生持ちで実力は拮抗状態。その上六葉の殺し方のみ相手にバレているのが現状であるため、正直ものすごくやりづらい。
今度は小さく視認しづらい爆弾と撹乱用の煙幕を地面に転がす。爆弾爆発後、爆弾の陰に隠れていた煙幕がすぐに起動し、地下を真っ白に染め上げた。
六葉
六葉
(一度に全部喰らうしかないか…もしそれでも────)
すると煙の中から鋭い“手”が六葉の胸目掛けて飛んでくる。六葉は咄嗟に腕を交差してそれを受けつつ、後方に飛んだ。手が刺さった腕は僅かに出血し、小さな血溜まりを作る。
六葉
六葉
ふっ!
血溜まりを気にせず踏み越え、虫使いへと手を伸ばした。黒いモヤが虫使いの全身を覆う。虫使いは後方に下がろうとするも、判断が遅くモヤに完全に包まれた。モヤが収束すると同時、虫使いの姿は完全に消える。気配も取りこぼしもない。
六葉
六葉
まず一人…
しかし休む暇は無い。六葉の真後ろから脳天目掛けて放たれた理玖の暗器が突き刺さった。六葉の意識は一瞬混濁し、体が硬直する。暗器が引き抜かれるのと共に六葉の身体は後ろに引っ張られ、頭から後ろに倒れていく。そんな六葉の心臓を狙って、理玖は手首に隠した小型ナイフを取り出した。
理玖
理玖
だが、六葉は瞬時に後ろを振り返りナイフを掴む。そして血だらけになる手を気にせず理玖の右手を外側へ振り払い、体勢を崩した。それによりがら空きになった理玖の鳩尾に六葉の鋭い膝蹴りがもろに入る。
六葉
六葉
(…再生するなら外傷を負わせるより治らないダメージを負わせるほうがいいってのは、よく知ってる)
自分も、そうだから。
腹をかっさばかれるより、両腕の関節を外された方が余程やりづらい。
六葉
六葉
このままこっちも食べ────
六葉が足を踏み出した直後、信じられない光景が六葉の目に飛び込んできた。
六葉
六葉
っ!?
どこからともなく現れた虫使いが、理玖の腹を貫きながら六葉を狙ってきたのだ。
虫使いを喰らっても無駄だったという事実と、あまりに味方を味方と思わない戦法に六葉は奥歯を強く噛む。
六葉
六葉
(…どうする?私が打てる手札は全部打った…後はベルゼブブを召喚するか、増援を呼ぶかしか無いけど)
スマホを使う時間はない。増援を呼ぼうにも距離があり過ぎる。この事を予見できていた誰かでもいない限り、期待するのは無駄だろう。
六葉
六葉
…ただでさえ今貧血だから、あんまりやりたくないんだけど
六葉は指の皮膚を食いちぎり、地面に垂らした。そして大きく息を吸い込み、それを口にする。
六葉
六葉
────汝、我と契約せし者、我の血を糧としその御力を欲す
地面にこぼれ落ちた血溜まりとなった赤は空中に舞い上がり、繭を形成していく。そして破裂────が、そこにベルゼブブは居らず、ただ血が地面に飛散した。
六葉
六葉
…まさか
ニール
ニール
それくらいの妨害、しているに決まってるだろう?
完全に詰んだ。これでもう六葉に持久戦以外の手は残されていない。ナイフの柄を強く握りしめる。
六葉
六葉
…ハハ、上等だよ
それでも、六葉は笑った。血の混じった白い歯を見せ、醜悪に笑う。この状況を楽しむかのように、六葉の瞳に狂気が宿った。
六葉
六葉
(ベルゼブブは呼べない…ならせめて、最大限ベルゼブブの力を使える状態で戦った方がいいよね。後は、手持ちの武器次第)
六葉が今持っている道具はナイフと3個の小型爆弾、4つの煙幕くらいで、他には靴底に隠した暗器くらいしかない。それを失えば六葉は完全に肉弾戦となる。
六葉
六葉
やってやろうじゃん
─────戦闘狂としての性が、牙を剥く。

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