ゆあんくんの部屋に入って、
1時間が経った。
彼は首を傾げて考えている。
何を言われるのだろうのかと、
びくびくしてしまう。
知らないうちに涙が出ていたらしい。
彼は私の頭をぽんぽんと叩いた。
怖いに決まってる。
急に鎖をつけられたのだから。
“怖い“ と言おうとした。
言おうとしたけど、言えなかった。
彼の視線が、とても鋭かった。
慌てて、首を横に振る。
かちゃっと、鍵が開いたような音が聞こえた。
体を見ると、鎖は外れていて、
簡単に身動きがとれるようになっていた。
ははっと、笑ったその顔は、
私が大好きだった頃の彼と同じ。
どっかに行くだなんて、
私が逃げ出すとでも思っているのだろうか。
逃げれるわけないのに。
いくら元彼とはいえ、
今は全然違う関係だし、
それに、一緒にお風呂は普通に恥ずかしいから
嫌だ。
よほど私と入りたかったのか、
少し残念そうな顔をして言った。
脱衣所で服を脱ぎ、
ドアを開け、お風呂場に入る。
ふと、視界に映った、お風呂の窓。
ここからなら外に出れるんじゃないかと
考えている自分がいる。
でも、外に出たところでどうするのか。
しかも、彼にいつバレるか分からない。
いつか、優しかった頃の彼に戻るんじゃないかって
期待している。
きっと、鎖も外してくれるって。
ちゃぽんと湯船に浸かる。
冷えていた体が一気に温まる。
温まっていると、なぜか気持ちが楽になった。
あの鎖は一体何のための物だったのだろうか。
考えていると、楽になったはずの気持ちが、
またぐちゃぐちゃになり、考えるのをやめた。
そろそろ出よう。
彼に怪しまれてしまっては、困る。
体をシャワーで流し、お風呂のドアを開ける。
体を拭いていると、彼の声が聞こえた。
何に対しての大丈夫なのか。
分からなかったけど、流石に無視は
酷いと思ったので、とりあえず返答した。
ドアを開けると、目の前にはゆあんくんがいた。
ベッドにつくと、また私に鎖をつけようとした。
彼は、寝転がる私の上にまたがるようにして
私の腕でに手を伸ばした。
咄嗟に出た声に、自分でも驚いた。
言ってしまった。
私のために、こんなことを?
全然私のためなんかじゃない。
むしろ、もう解放して欲しい。
ゾクっと、全身に寒さが伝わった。
もう、あの頃の彼とは違うんだ。
そういう悲しみと、怖さが伝わる。
こんなに不気味な彼を見たことがない。
にこにこと、物騒なことを言う。
逃げないと、
逃げないと、駄目。
怖さで体が震える。
布団に這いつくばるように、
私は体を前へ動かした。
動かせたのも一瞬。
すぐに彼に捕まり、
注射器のようなものを刺された。
そこで私の意識は途切れた。














編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。