遡ること数時間前
数学で先生にあてられてからずっと考えていた。
…ゆあんと、触れ合うにはどうすればいいのか。
ゆあんは、ボディタッチがあまり好きではない。(たぶん)
でも、それ自体が私は嫌なのだ。
もっとくっついていたい。
……そう思うのは、か、彼女だし…いいよね?
そのためには、まずゆあんにもっと好かれる必要がある。
というか、私が積極的になる必要がある。
一定の距離を保っているのは私も何も言ってない。
そこを、私がもっと積極的にアプローチすれば、もっと私だけを見てくれるんじゃないかっていう憶測。
……あれ、私ってこんなに独占欲強かったっけ…?
まぁ、いいや。ゆあんが好きなのは事実だし。
でも、これだけで恥ずかしがってちゃだめだ。
なんでもこい状態でアプローチしなきゃいけないんだから!
恥ずかしいけど、やるしかない!
わ~!!声裏がったァァ!!
ばか!!私のばかぁ~!!(泣)
ぅおい。いきなりぶっこみすぎだろ、私!
若干目をそらし気味にそうつぶやいたゆあん。
自分で行ってはずくなるな、これ。
世のリア充サンたちはこんなことをしてるのか…。
ゆあんはそういってズイッと右手を差し出す。
子供っぽいゆあんが可愛くて「ふはw」と笑ってしまった。
私はそのまま、ゆあんの手をギュッと握った。
ゆあんは、握られた手をじっと見つめている。
いきなり、スルリと恋人つなぎをされて私は顔を真っ赤にする。
ゆあんは、そんな私を見てニヤニヤしている。
思わずカチンときた。
私はスン、と真顔になるとぎゅぅっとさらに強く手を握る。
ってそうじゃないそうじゃない。
今でしょ、積極的になるのは。
久しぶりに手をつなげたんだから…!!
なんとも思ってなさそうな顔でこっちを見たゆあん。
私はスーッといきを吸った。
……やばい、こんな近くで好きっていうの、めっちゃ久しぶり。
はずかしっ!!
うぅ、なんか耳まで熱いんですけどっ!
ゆあんは面食らったように目を見開いて固まる。
え、思ってた反応と違うんですけど。(真顔)
我慢とか無理、って言った?
ねぇ、ゆあん、何を我慢して___
まっすぐに私を見つめてそう言ったゆあんの顔は、さっきまでの少し取り乱した顔とは全く違った。
私が見たことのない、ゆあんの顔。
まるで__
__狼のような、ぎらついた瞳。それに見つめられた私は……
___不意にもゾクッとしてしまった。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。