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第2話

この世に生まれた日。
451
2024/03/25 11:00
ちょうど今日から1週間前。
お風呂から上がり翔太に声をかけようと思ったが話し声が聞こえてきて電話でもしているのかなと思い俺はそっとリビングに戻った。
「そうそう。でさ?やっぱり涼太って勘つえーじゃん。絶対成功させたくてさ…」
恐らくサプライズの計画でも立てているのだろうか。俺にバレたくない、そして成功させる。来週にある俺の誕生日…。
…既にバレてるけどいいのかな。
「でさぁ、俺めちゃくちゃ料理壊滅的じゃん?だから教えてほしいのと、当日できたら手伝ってほしい」
おぉ、誕生日には珍しく翔太の手料理が食べれるのか…。
「…なっ、!?ば、ちげぇし!」
あれ、唐突にツンツンし始めちゃいましたけど何を言われたんでしょうね…。
「もういい!じゃあ後はよろしく!」
そして一方的に電話を切りましたよ、と。
俺は少し時間を空けていかにも「今さっきお風呂から上がりましたよ」感を出して翔太に声をかけた。
「ん、ぁ、涼太」
「お風呂入ってきちゃいな?」
「はーい…」
サプライズの事がバレたくないのかなんなのかしらないが唐突に俺によそよそしくなる翔太。本当にわかりやすすぎる。
「…でもサプライズ、ねぇ…。内容までは知らないし楽しみにしとこ」
この日からサプライズを知られたくない翔太とサプライズ内容を知りたくない俺の謎すぎる1週間が始まった。
そしてついに今日。俺の誕生日。
本当に大変だった。
なんの躊躇いもなくリビングで電話をし始める翔太と、それにたいして「部屋に行け」というのも変だから俺が急いで自室に駆け込んでみたり。
仕事が終わって家に帰るとだいぶバタバタとした音が聞こえた後に「帰ってくるなら連絡しろよ!」と逆ギレされるも俺は「料理の練習でもしていたんだろうなぁ」と思い大人しく引き下がってみたり。
そして今日も。
「あ、ふっか。お待たせ」
「大丈夫!全然待ってない!」
ふっかに誘われてゲームセンターに来た。なんでも今日の主役            誕生日の俺にたくさんプレゼントをしたいらしい。
とかいいつつふっかもきっとサプライズ要員で俺を家から引き出すための口実だろう。
そんなこんなでふっかに振り回されながら1日の大半を終えて今は帰宅途中。
…にしてもサプライズも嬉しいけど今日一緒に過ごした時間が翔太よりふっかの方が長いっていうのが少し残念だな。
「ただいまぁ」
家のドアを開けると特に何もいつもと変わらない光景が広がっていた。
「おかえりー」
俺の勘違いだったのかな、サプライズは本当はなかった?だったらふっかに呼び出されたとしても俺はもうちょっと粘ったのに…。
「涼太!今日は俺が飯作った!」
「へぇ〜、そうなんだ…」
「え、なんか反応薄くね?」
「ん?…あ、いや、ちょっとお腹すいちゃったからかも。翔太のご飯早く食べたいなぁ」
翔太のご飯を食べることができるなんてそうそうないのに。
…もしかして、これが翔太からのサプライズだった?…でも翔太は何か特別な日には毎回毎回頑張って作ってくれているからなんとなく想像だってつく。
「じゃあ涼太、誕生日おめでとー!」
そう言ってグラスに注いだお酒を掲げる翔太。料理も美味しそうだし頑張ったことが伝わってくるのにやはり、どこか悲しい気持ちになってくる。
「翔太、この前より料理美味しくなってるよ」
「マジ?よっしや!」
その後も順調に夕食を食べて、もちろんケーキも食べて、例年より少し寂しく感じた俺の誕生日パーティーは終わった。
「翔太、お風呂先入る?」
「俺は良いよ。涼太が先入りな?今日の主役だろ?」
「…そっか、分かった」
一緒に入ろうとは言ってくれないんだ。
…分かってる、翔太がそんなに積極的になれないことも、恥ずかしがり屋で俺の方が彼氏っぽい言動をしてしまうことも。
でも、
「期待させといて、何もないとか、ずるいじゃん…」
お風呂場で、ポツリと呟いた言葉は誰にも拾われることなんてないまま虚無に消えていった。
「翔太ぁ、上がったよ〜、次どうぞー」
お風呂から上がり、翔太に声をかけるも反応が中々返ってこない。
「あれ、翔太…?」
翔太が見当たらなくてどこに行ったんだろうとスマホを見ると一つの通知が入っていた。
『寝室で待ってる』
…何これ、すごく嫌な予感しかしない。もしかして抱き潰されたりする?ものすごく寝室に行きたくない。
「…翔太ぁ?」
まぁ行かないわけにもいかないので俺はそぉっと寝室に入った。
しかしそこには翔太の姿が見えない、というか真っ暗で何も見えない。電気のスイッチを押して部屋を明るくしようと手を伸ばすと何かにあたった。
「りょーたっ、ハッピーバースデー」
そのまま抱きつかれて聞こえてきたのは大好きな大好きな恋人の声。
「サプライズないと思った?」
「ぇ、なんで知って…」
「だって涼太ぜってー俺がサプライズ仕掛けようとしてたこと気づいてたじゃん」
暗闇に慣れてきた目で翔太のことを視認すると拗ねたように唇を尖らせていた。
「…めっちゃ、びっくりした。…それにサプライズないと思ってたから、…」
「じゃあサプライズ大成功!」
嬉しそうな声を出す翔太。
「というかそろそろ電気つけて良い?」
「あ、そーじゃん。じゃあ俺がつけるからベッドの方見てて?」
翔太に言われるままベットがあると思われる方向を見ているとパッと電気がついた。思わず眩しくて目を瞑る。
「涼太?目、開けて?」
「…うん、」
目をそっと開けるとベッドの上にはたくさんのプレゼントや風船があった。
「ねぇ涼太。真ん中のプレゼント、開けてみて?」
そう言われて真ん中にあった小さい箱を手に取る。
何が入っているんだろうとドキドキしながら箱を開けると綺麗に輝く指輪が入っていた。
「涼太、俺と結婚してください。…法律的に無理なことってのは分かってる。でも、やっぱり、その…涼太と結婚したくて、…」
最初は良かったのだけれど途中から恥ずかしくなってきたのかしどろもどろになっていく翔太。
「…翔太」
「な、なに…」
「ありがとう、俺めっちゃ嬉しい。よろしくね?」
何故かプロポーズされた俺よりも顔が真っ赤な翔太に抱きつく。本人は何が何だかわからないというふうにワナワナしているけど…。
「翔太、大好きだよ。世界で1番愛してる。今日を最高な日にしてくれてありがとう」
「お、おれも、お前のことあいしてるし、っ!!」
翔太のおかげで俺の誕生日がもっと大事な日になったのは間違いない。
ありがとう、翔太。


愛してる。
新作ランキング33位ありがとうございます!!

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