長尾side
”もちろん”
少し前の俺なら、この言葉を言うことが出来ただろう。
言いたい
今だって、”やりたい”って言いたい
でも、体は言うことを聞いてくれない
いくら俺が立ちたい、やりたいと言っても……
必死に訴えてくれる大橋くんを目の前に、涙が溢れそうになる
だめ
大橋くん、泣かんといて
今の俺に、出来ることはないんやから
ステージに立つことができない悔しさと、
情けない俺の体への怒りで
目線の先にいる大橋くんの姿はどんどん滲んでいった
背中をさすってくれている手から伝わる温もりは、
とても暖かくて優しくて
懐かしかった
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。