照。
…そう、照。
今日ね、照のこと守ろうとしたんだ。
でも、またダメだった…
もうやんなっちゃう。
…諦めるの、って?
そんな訳ないじゃん。
何度だって、やり直すよ。
運命が許す限り。
ねぇ、だから今は
もう少し、眠らせて…
なに?
まだ眠いよ…
ユサユサと肩を何度も揺らされて、ゆっくり重い瞼を開いた。
ポタリと、顔に水が落ちてきた。
…あ、涙か。
しょっぱい、と唇を舐める。
目の前にある、好きな人の顔。
その目には、いっぱいの涙が溜まっていた。
そこでようやく、今いるのが照の太ももの上だと気づく。
もう、どうしたの?
心地よく眠っていたというのに。
叩かれた頬が、ヒリヒリと痛む。
頬に手を添えようとして、視界に映り込んだ手は、
赤黒い液体に濡れていた。
まだ、あたたかい。
自覚すると同時に、腹がズキズキと痛んだ。
上体を起こそうとすると、照に止められる。
血に濡れた時計を、ゆっくりと見る。
『6/12 A.M. 2:00』
次の日だ。
ようやく終わったんだ…
ふっかは…?
視線を動かすと、阿部ちゃんが誰かを押さえ込んでいる。
泣きそうな、苦しそうな顔で、その人を見ている。
それはふっかだった。
ふっかは何の抵抗もしていなかった。
その後すぐにやってきた救急車。
俺は担架に乗せられ、運ばれる。
警察に取り押さえられたふっかが、一瞬こっちを見た。
悲しそうに微笑んで、口を動かす。
「終わりだよ」
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。