side藤崎圭
「……て、…きて………起きて…」
うるせぇ起こすな……もう少し寝かせろ…。後でめちゃくちゃ急いで準備するから…
「圭〜、早く起きないと遅刻しちゃうよ〜」
誰だ……おふくろ?なんでここにいんだよ。つかその学生起こすみたいな言い方やめろ……
「けーい!圭ってば〜」
いやでも、おふくろの起こし方はもう少し雑だったはず……………
おはよう、と言いかけて言葉を失った。
誰だ。
頭がそう叫んだ瞬間声にも出ていたらしい。だが目の前の男はきょとんと不思議そうな顔をしている。
目の前の黒と茶色の髪をした男は言った。頭には猫耳……ファッションか?そんなもんダルい盛り上がり方した飲み会の罰ゲーム以外でつけたがるやついるんだな。
………なんて、現実逃避を初めてみた。
だってそうだろう。寝起きに加えて情報量が多すぎる。なんだ、これは夢か??
それに、目の前とは言ったが俺は起き上がっていない。つまり俺は男にベッドで床ドン的なあれをされている。なぜだ。
…………うん??
いや、なぜ「当然だろ」みたいな顔をしている?
確かに、毎朝俺の上に乗って俺を起こそうとしてくれるのは小夜の癖…?というか習慣だ。
………と、ここまで考えてふと1つの考えが頭をよぎる。
いやしかし、どうしてそんなことになってんのかは置いといても、そうじゃないと説明つかなすぎだろこの状況……
なぜ俺と小夜しか知るはずのない習慣をコイツはやっている?というかなんでここにいるんだ。そして小夜はどこだ。
お互いに沈黙が続く。
男は俺の頭の真横に腕を着いた体制のまま、徐々に目を見開いて驚いたような顔をした。
今ので何となく察してしまった。
コイツは小夜だ。気づくのも反応もとろすぎる。
とりあえず今日は会社を休もうと決意した。
一体なんの気まぐれか。
その日、「ペットと会話したい」という日本中の飼い主の願いと、「人間になりたい」という日本中のペットの願いが、なんの予兆もなく突然叶った。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。