前の話
一覧へ
次の話

第1話

錆兎 ⌇ 貴方が錆び付いて離れない。 
100
2025/08/28 07:40 更新



  貴方の綺麗な声で私の名前が呼ばれて、
  貴方の美しい瞳に私の姿が映って、
  貴方の優しい顔で私の瞳から星がうまれて、

  貴方の心地良ここちよぬくもりに私が包まれて、
  貴方への数々の愛を私が狂い咲かせて、
  貴方は少し幸せそうに、困った様に、



       「 ただいま、あなた。 」



  私の耳元にいとおしそうにささやいて、
  私の瞳からうまれた星の欠片を指で拭って、
  私の顔で傷の付いた口元が緩んで、

  私のぬくもりを感じて少し肩をふるわせて、
  私への数々の愛を星座の様に紡いで、
  私は貴方に近付く為に少し背伸びして、



       「 おかえり、錆兎。 」



  いとおしい貴方にただ笑顔で言葉を紡ぎ返す。
  そんな日が迎えに来ることをずっと、
  ずぅーっと、待って、待って、待って。

  貴方との約束も忘れず、待って、いたのに。
  別に、凛とした姿で現れた別の男が放つ言葉、
  聞きたかったわけじゃないんだよ、錆兎。


冨岡 義勇
 …………錆兎は…………最終選別にて 
'' 亡くなりました '' 。

  
  嘘なのではないかと、たちの悪い冗談なのではと
  心底疑った。貴方が死ぬはずないじゃないと。
  でも真実は全て君の瞳がドス黒く物語ってた。

  錆兎、目の前の君が哀しそうで辛そうだよ。
  慰めてあげてよ、そういうの、得意でしょ。
  そう叫んでも、貴方の香りは消えていて。

  貴方は生きて帰ってくる、そう信じたかった。
  事実を信じようとして信じられなかったから。
  でも君にそんな顔をされてしまったら。
  
 そ、うですか。 


  どうしたって、信じざるを得ないじゃないか。
  嗚呼、どうしてだろう。涙が出てこない。
  何故だろう、言葉すらも消えてしまった様だ。
  
  ただ君と私の空間には '' 貴方が死んだ '' 。
  その一つの事実しかただよっていなかった。
  ぬくもりも光も闇も音すらも無く、事実だけが。

  錆兎。何故なにゆえ貴方は約束呪いだけを私にのこして
  あのあおい空へとってしまったのですか。と
  さいごに貴方へ問いかけても、答えは無。
  
 ………お伝え、頂き……… 
有難う、冨岡さん
冨岡 義勇
 ………失礼しました、
どうかお元気で、木蔦キヅタさん
  
 ………!…有難う。 
  
 …君はどうか元気でね、冨岡さん 


  
  木蔦キヅタの名前で呼んでくれて、嬉しかった。
  君は私の本当の名前、知っているはずだから。
  だ私のことを心配してくれて、嬉しかった。
  君は私の正体、知っているはずだから。

  君とはお互いに苦しそうに顔を歪めながら、
  震えた声で帰りの挨拶を告げた後、
  哀しそうな背を向け、明るい方へ帰っていた。

  君が帰ったあと、貴方との想い出の場所へと
  足を進めた。空には星や月が淡く滲んでいたが
  そんなことは気にせずにただ足を進めていた。

  貴方が一生懸命選んでくれた着物を着ながら
  夜が明けるまでに貴方との想い出の場所に
  着けるように、少し足を進める速度を早めた。


  
  
 ッはぁ……着、いた…… 




  暫くして、貴方との想い出の場所に着いた。
  此処は夜が明ければ日が良く当たる。
  近くには、藤の花が綺麗に咲いていて、
  思わず複雑な感情を抱く。

  藤の花が嫌いだ。貴方の死を藤の香りで
  包むように隠してしまうから。
  藤の花が好きだ。貴方が一生懸命選んだ
  着物の柄が美しく咲く藤の花だから。

  きっと貴方も知っていた。私の正体を。
  私の本当の名前を。私の本当の姿を。
  でも知らないフリして、守ってくれていた。

  
 ……錆兎、久し振りだね。 
逢いに来たよ。
  
 この前ね、錆兎に似た香りを 
見つけたんだよ。


  知っているよ。もう貴方には届かないと。
  でも今だけは、私の馬鹿げた地獄恋文インフェルノラブレター
  世界の中心から精一杯の愛を込めて叫ばせて。
  全ては貴方が、庭に捨てられた私を
  家に招き入れてくれたことから始まった。
  駄目だと分かっていても、逆らえなかった。

  木蔦を庭に植えたら、生命力が凄いから
  どんどん絡み付いていって外せなくなるのに、
  貴方は笑って私の頭を撫でてくれた。

  絡み付く蔦を断ち切ることも出来た筈なのに、
  貴方はただ笑って、愛でて、錆び付かせた。
  まるで逃がすまいと囁いている様に。
  
  
  
 貴方は本当に狡い。
約束破る癖して離れないの。



  無事に帰ってくるって約束したのに。
  帰ったら結婚してくれるって約束したのに。
  貴方の名字をくれるって約束したのに。
  ちゃんと指切りげんまんしたのにね。

  この世界は貴方と私の禁忌を赦さなかった。
  きっと貴方も私も悪いコだった。
  傍から見たなら貴方と私の関係は、'' 悪 '' 。
  貴方はもっと良いコと結ばれた方が良かった。

  本来跳べる筈の貴方を私は蔦で縛り付けた。
  どうかこのままで居て欲しいと。
  本来死ぬ筈だった私を貴方は錆び付かせた。
  どうかこのままで居たいと。
  

  
 私に絡み付いている蔦に、
貴方が錆び付いて離れないの。
  
 ねぇ、好きだよ。大好きなの錆兎。 
  
 何で先に逝っちゃったのよ、ばか 
私は貴方が居ないと何もできない。
  
 未だ貴方と行きたい場所沢山あるよ 
貴方とやりたい事も、山程あるし、
また貴方と素敵な花火を見たいの…ッ


  ねぇ、錆兎。お願いだから声を聞かせてよ。
  硝子玉みたいな貴方の瞳をまた見たいの。
  貴方の顔を見て生きてるって安心したいの。

  貴方の温もりに包まれて泣きたいの。
  貴方への愛をずっと叫ばせてよ。
  また貴方の「 ただいま 」を聞きたいの。

  ねぇ、本当に大好きなの、錆兎。
  貴方に笑顔で「 お帰り 」を言わせてよ。
  貴方がお爺ちゃんになるまで傍にいさせてよ。


  
 貴方の傍に居てさえいれば 
私は幸せだったのに。
  
 何でこんなことすら、叶えさせて 
くれないのですか。神様。


  嗚呼、太陽が昇ってくる。もう夜が明ける。
  淡く滲んでた星も月も見えなくなっていく。
  空の色が紺や青紫から明るく変わっていく。

  
  
  貴方に殺されたかった人生でした。


  私の身体が星の欠片の様に崩れ落ちてゆく。
  陽の光に照らされて憎たらしく輝いてる。
  もう終曲フィナーレを迎えるのだと察した。
  嗚呼、之だけは最期に貴方へ向けて紡ごう。

  
        「 あいしてる。 」


  心做しか、貴方の声と重なった気がした。
  私は何故か幸せそうに笑みを浮かべていた。
  








冨岡 義勇
 ……… 



  
  女がこの場所を訪れた後、一人の男が
  静かに姿を現した。その時、男が見たものは
  藤の花が描かれた着物と、着物の傍に
  咲いている、季節外れの木蔦アイビーだった。






すいばな
 なぁにコレ………😭😭 
何書いてんの私は………😭😭
すいばな
 ゴメンネ、下手くそで………。 
錆兎夢を書こうと思ったら
よく分かんなくなった。
すいばな
 一応伏線色々貼ってるので 
探してみて下さい。💖

  
すいばな
 感想コメント、考察コメント 
大歓迎ですのでお待ちしてます✨️

プリ小説オーディオドラマ