海斗の背中を追って歩く。
いつもより無言が長い気がして、胸の奥がざわついていた。
辿り着いたのは、街灯の少ない静かな公園だった。
人の気配もなくて、
聞こえるのは風が木々を揺らす音と、
3人分の足音だけ。
そう言って海斗が向かった先には、
少し長めの階段があった。
迷いのない足取りで登っていく海斗。
その後ろを、海人とあなたも続く。
一段、一段。
上がるたびに、胸の鼓動が少しずつ強くなっていく。
──なんだろう、この感じ。
嫌な予感、じゃない。
でも、何かが変わる気がする。
そんな予感。
階段を登り切ったその瞬間──
視界が、一気に開けた。
目の前に広がったのは、街の光。
夜の闇の中に、無数の灯りが散りばめられていて、
まるで宝石みたいに輝いていた。
思わず声が漏れる。
自然と目が輝いていた。
その景色に心を奪われたまま、しばらく見つめていると
ふと、視線を感じた。
横を見る。
海人と海斗。
2人とも、夜景じゃなくて──あなたを見ていた。
一瞬、息が詰まる。
そして、2人は一度だけ目を合わせた。
まるでタイミングを確認するみたいに。
その空気で、わかった。
……あ、来る。
先に口を開いたのは、海斗だった。
心臓が強く跳ねる。
思考が止まる。
でも海斗は、目を逸らさない。
まっすぐすぎる言葉。
逃げ道をくれないくらい、真剣な目。
何も言えない。
言葉が出てこない。
すると──
今度は海人の声。
少し低くて、でも優しくて、
いつも通りなのに、全然違う響き。
その一言だけで胸がぎゅっと締め付けられる。
シンプルなのに、重い。
ちゃんと届く。
ちゃんと刺さる。
気づいたら、手が震えていた。
震えた手を口元にあてる。
こんなの、ずるい。
2人とも。
こんなタイミングで、こんな場所で、こんな顔して。
心、揺れるに決まってる。
海斗が少しだけ柔らかく笑った。
逃げてもいいよ、って言われてるみたいで。
でも同時に、“ちゃんと向き合え”って言われてる気もした。
海人も続ける。
その言葉に、胸が痛くなる。
──覚悟。
2人はもう、そこに立ってる。
…私は。
私は、まだ
何も決めてない。
どっちにも惹かれてるくせに、どっちも選べてない。
このまま曖昧でいるのは、きっと一番だめだ。
逃げてるだけ。
3人の関係に甘えてるだけ。
ぎゅっと手を握る。
震えを止めるみたいに。
ゆっくり顔を上げて、2人を見る。
ちゃんと、目を見て。
それが今の、精一杯だった。
でも、2人は何も言わなかった。
ただ静かに、受け止めてくれた。
夜景の光が、3人を包む。
綺麗なのに、少しだけ苦しくて。
でも確実に、何かが変わった夜だった。















編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。