土曜日。
約束の時間より30分も早く図書館に着いてしまった。
(……早く来すぎたかな。)
少し緊張しながら参考書を開いていると、後ろから優しい声が聞こえた。
阿部「おはよう。」
振り返ると、そこには阿部くん。
白いシャツにデニムというシンプルな服装なのに、思わず見惚れてしまう。
「お、おはよう!」
阿部「待たせちゃった?」
「ううん!私が早く来すぎただけ!」
そう言うと、阿部くんは優しく笑った。
阿部「そっか。じゃあ今日はたくさん勉強できるね。」
その笑顔を見るだけで、緊張が少しほぐれていく。
席に着くと、阿部くんはノートを覗き込んだ。
阿部「前回教えたところ、復習してきた?」
「うん!」
ノートを見せると、阿部くんは驚いたように目を丸くする。
阿部「すごい。ちゃんとまとめてる。」
「阿部くんの教え方が分かりやすかったから!」
その言葉を聞いた阿部くんは、少し照れたように笑った。
阿部「そう言ってもらえると嬉しいな。」
その笑顔に、また胸がドキッとする。
勉強を始めて2時間。
「うぅ……頭がパンクしそう。」
私は机に突っ伏した。
すると阿部くんがクスッと笑う。
阿部「よく頑張ったね。少し休憩しようか。」
そう言って、自動販売機で飲み物を買ってきてくれた。
阿部「はい。あなたは甘いの好きそうだから。」
「えっ、ありがとう!」
私の好きなカフェオレ。
偶然なのかな、それとも…。
「どうして分かったの?」
阿部「なんとなくかな。」
そう言って笑う阿部くん。
(なんとなくでも、嬉しい……。)
帰る時間になり、図書館を出る。
夕方の風は少し涼しくて、二人で並んで歩く帰り道が心地いい。
「今日はありがとう。」
阿部「こちらこそ。あなたが頑張るから教えるのも楽しいよ。」
「ほんと?」
阿部「うん。だから、来週も一緒に勉強しよう。」
その一言だけで、心臓が大きく跳ねた。
「もちろん!」
笑顔で返事をすると、阿部くんも優しく笑い返してくれる。
別れ際。
阿部「じゃあ、また来週。」
「またね!」
阿部くんが手を振って歩いていく。
その背中が見えなくなるまで見送っていると、自然と笑みがこぼれた。
(来週も会える。)
その約束だけで、一週間頑張れそうな気がした。
一方その頃——
阿部side
図書館を出て一人で歩きながら、ふと今日のことを思い返す。
阿部(あなた、本当に頑張り屋さんだな。)
最初は「勉強を教えてほしい」と頼まれただけだった。
でも、一生懸命ノートをまとめて、分からないことを素直に聞いてくる姿を見ると、つい応援したくなる。
そして——。
阿部(……笑顔、かわいいな。)
そう思った瞬間、自分で少し驚いて苦笑する。
阿部「何考えてるんだ、俺。」
まだ、この気持ちが恋なのかは分からない。
だけど、来週また会えることが少し楽しみになっている自分がいた。












編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。