社会人そま→てる
てるさんが元彼らしき人を引きずっています。
そまさんがてるさんの後輩設定(大学からの)。
酒弱い組の癖に飲酒させました。反省はしてます。でも後悔はしてません。
2人が焼肉屋で会話してるだけ
『てると、付き合って』
『……どこまで?』
『……死ぬまで。』
トングを持って肉を裏返しながら先輩がそんな事を言うもんだから、頭の中で反復する
徐にレタスを頬張った
そのカルビを米と一緒にかきこみ、麦酒を呷ると店員さんを呼んだ
畏まりました〜と去っていく店員さんを横目に、俺もタン塩を焼き始める
ね?と顔をのぞき込むように小首を傾げると、態とらしく溜息をつかれた
彼は銀色の橋で焼けた肉をつまんだ
耳に横髪をかける仕草を見て、自分でも気分が急降下したのに気づく
そう笑いながらてるとさんは肉を頬張る。カルビがお気に入りらしかった。
反対側の横髪が耳にかかり、俺があげたピアスが覗く
彼は大学生の頃から、片側だけしかピアスをしていなかった。
まるで心の穴を埋めるように、ピアス穴にピアスを通していたことも
時折誰かを懐かしむように、耳を触るのも
きっとその相手が男なんだろうということも
真っ向から否定する姿に、思わず声が出る
相変わらず目の前の彼は米を咀嚼しているだけだった
指折りに数えるてるとさんに、憂いの表情も儚さもなかった。
ただ今日の出来事について喋る青年に見えた
何処か遠くを見つめて思い吹けるようなその表情も、目の前の彼が愛した"誰か"の残滓なのだろう。
彼が毎日のように埋める、左耳の傷痕と同じように。
する、と彼の手をとる。翡翠の瞳が丸くなった
生2つと白米大盛りでーす
かたりと置かれたジョッキにてるとさんは手を伸ばし、イッキに呷った
ほら、旅行行った時の写真、とスマホを目の前に置かれる
恋人同士、というよりは親友のような距離感の2人は、互いにとても笑顔だった
そうま、撃沈。
立派な大人です!と猛抗議すれば、はいはいとあしらわれる
残っているハラミを白米に大量に乗っけ、麦酒で全て流し込んだ。
てるとさんはユッケを食べていた。
そろそろお開きかというところで勃発した伝票の奪い合い。
心做しかてるとさんのこめかみにも青筋が。
先程の話題を掘られ、伝票から手を離す
よろしい、と伝票とカードを持ってレジへ向かうてるとさんの背中を眺める
会計をしている彼より先に店の外に出ると、絵の具をぶちまけたかのような空が広がっている
ところどころ雲が散らばっていた
肌寒い気温が熱い頬を充分に冷ましてくれる
会計を済ませてくれた彼に会釈をすると、わしゃわしゃと頭をかき混ぜられた
行こうか。
そう歩き出す彼が向こうをむく瞬間見えた光がどうも落ち着かない。
彼の左側に周り、隣を歩く
筋の通った綺麗な横顔
湿った瞳が夜の街に溶けていく
揃いのピアスを着けてる"誰か"が酷く羨ましい
傷痕をピアス1つで埋めることのできる燦然とした存在でいるのが羨ましい。
隣を見ると、目にうつるる目映い輝き
写真に写っていた男の瞳と酷似した、ペリドットのピアスが
憎いほどに、眩しかった。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!