第14話

君の声で未来を名付けて
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2025/09/17 14:04 更新
としみつ
としみつ
あなた、これからどうする?
放課後。
今日も海辺にやって来た私達。
まだ夕陽が沈むには早い空の下、としみつは私の名前を、もう迷いなく呼んでくれた。


何度も、何千……何万回も聞きたかったその声。
夢のように甘くて、でも確かに“今”に存在している音。


私は嬉しくて、胸がじんわりと熱くなった。
あなた
どうするって?
としみつ
としみつ
俺達のこれから。
どんな未来にしたい?
としみつは空を見上げながら言った。
その視線の先にあるのは、これまでの記憶か、それともまだ見ぬ未来か。


私は彼の横顔を見つめながら、言葉を探す。
あなた
……たとえば朝起きて、LINEして。
たまにケンカして、仲直りして。
たくさん笑って、ちゃんと泣いて、
“なんでもない日”をたくさん重ねていけたらいいな
としみつ
としみつ
……なんでもない日ね
あなた
うん。何もない日が1番大事だと思う。
だって魔法も輪廻もない普通の日々の中で、あなたと手をつないでいられるなら、それが一番の奇跡だから
としみつは、ふっと笑った。
としみつ
としみつ
やっぱお前ってさ、変わってるわ
あなた
変かな?
としみつ
としみつ
いや。俺そういうとこ、
めちゃくちゃ好きだよ
私達は自然に笑い合った。


遠くから潮風に乗って、波の音が微かに届く。
この海辺は2人の時間をいつも包んでくれる、静かな聖域だった。
その夜。
布団にくるまりながら、スマホの画面を見つめる。


としみつから、こんなメッセージが届いていた。
としみつ
としみつ
‘’俺さ、前に“未来って不確かだから信じられない”って言ったの覚えてる?”
としみつ
としみつ
‘’でも今は、ちゃんと信じたいと思ってる。お前と作ってく“2人の未来”を”
としみつ
としみつ
‘’だからさ
俺らの未来に名前つけない?”
目頭が熱くなった。


名前をつける……?


未来に名前を──


私は深く考えた。
この恋に輪廻の果てに辿り着いた想いに、ぴったりな名前。


やっと辿り着いた私ととしみつのたったひとつの“今”を示す名前。


そして数分後。
私は返事を打ち込んだ。
あなた
“ここから”って名前はどう?
あなた
この未来は何もやり直してない。
最初から作っていくんだよ。
だから“ここから”。
2人でゼロから歩いていくって意味で
すぐに既読がついて、返信が届いた。
としみつ
としみつ
‘’めっちゃいいじゃんそれ”
としみつ
としみつ
‘’俺めっちゃ好き。
“ここから”始めような”
翌朝。


登校途中の坂道。
いつもの場所で待っていたとしみつは、少し照れたように私を見て言った。
としみつ
としみつ
おはよう“ここから”
あなた
……それ、もうあだ名になってるじゃん
としみつ
としみつ
いいだろ。俺達だけの言葉だからな
あなた
じゃあ私も言う。おはよう“ここから”
私達は笑い合って歩き出す。


輪廻のない世界で。
魔法も何もない、ただの“今”の世界で。


だけど、確かにそこに生まれているのは、
“2人の時間”。


これまで幾度となく名前を変えてきた世界。
けれど、今度こそ本当の名前をもらった。


【ここから】


それは恋の始まりでもあり、
2人の終わりなき未来の“第一歩”だった。
数日後。
としみつがポケットからそっと何かを取り出した。


小さな銀色のネックレス。
ペンダントトップには、英語でこう刻まれていた。


“From here”


彼はそれを、照れくさそうに私に差し出した。
としみつ
としみつ
あげる。未来への鍵。
俺達が“輪廻じゃなくて、自分たちで選んだ未来”の証として
あなた
……うん、ありがとう
私はそれを胸にかけた。


もうステッキはない。
でも私達の間には、ちゃんと名前がある。


2人だけの“ここから”が。

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