バクバクとうるさい心臓。
胃がでるんじゃないの?ってくらいに締め付けられた着物の帯。
隣でルンルンなお母さんと、その奥で穏やかな笑顔を浮かべるお父さん。
そう。
今日は、ついにお見合い当日。
お見合いをするなんて私は一言も言っていないのに、お父さんが勝手に話を進めてしまったのだ。
お父さんの挨拶に合わせて座ったまま深く頭を下げれば、目の前に座って私を見つめていた如月さんがふわりと優しく笑う気配がした。
先日と変わらない、物腰の柔らかそうな方。
どこまでも優しくて、何もかも包んでくれそうな、穏やかで素敵な人なんだろうなってことが彼を見ていると伝わってくる。
如月さんが悪い人じゃないことはよくわかったけれど、2人きりで何を話したらいいんだろう。
それに、私はやっぱり蒼真以外はありえない!って思ってしまう。
だけど、今さら他に好きな人がいるから……なんて理由でお見合いを断る勇気はない。どうにかして如月さんからこの縁談を破談にしてもらわなくちゃ……!
〜ホテルの庭〜
あれから、庭をゆっくりと歩きながら如月さんからの質問攻めにあっていた私は
ここに来て突然の告白に、やっと落ち着き始めた心臓が再び暴れだしたのを感じた。
破談にしてもらわなくちゃいけないのに……!気に入られたらダメだ!どうにかしなきゃ。
ニッと笑って、私を真っ直ぐに見つめる如月さんに、ぎこちない笑顔しか返せない自分が嫌になる。
こんなにも素敵な人が目の前にいるのに……
どうして私の中から、蒼真は消えてくれないんだろう。
















編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!