第8話

第8話 デートに行くからね
6,656
2019/12/07 04:09 更新
お見合いから早いもので2週間が経とうとしている。

あの日から、如月さんは毎日のようにメッセージを送ってくるようになった。


【おはようございます】
【おやすみなさい】
【何してますか?】
【秋華さんに会いたいです】


そんなレパートリーの少ない、だけど届く度に不思議と嬉しくなるようなメッセージ。
西園寺秋華
西園寺秋華
顔よし、性格よし、
スタイルよし、家柄よし……かぁ
西園寺秋華
西園寺秋華
確かに、いい人なんだよな
だけどやっぱり……
───ピコン♪♪


突然、震えたスマホに手を伸ばせば、如月さんからの新着メッセージが届いていた。


開けばそこには【よかったら明日、デートしませんか?】と、絵文字ひとつないシンプルな文字たちが並んでいた。

明日は土曜日。
学校は休み、これと言って用事もない。
西園寺秋華
西園寺秋華
デート……かぁ
西園寺秋華
西園寺秋華
誘われたこと蒼真に言ったら
……どんな顔するかな?
行くなって止めてくれないかな?
……私のことが好きだって気持ちが目覚めたりしないかな??

なんて、ありえない期待を膨らませながら、気づけば私の足は蒼真の部屋に向かっていて。


───コンコンと、ノックの音が響いて直ぐに中から「どうぞ」と声がした。
西園寺秋華
西園寺秋華
遅くにごめんね
雪平蒼真
雪平蒼真
お嬢様でしたか
どうしました?
また眠れないとか……?
西園寺秋華
西園寺秋華
ううん、そうじゃなくて
ちょっと蒼真と話したいな〜って
雪平蒼真
雪平蒼真
……?
私でよければいつでも
話し相手になりますよ
雪平蒼真
雪平蒼真
それで?
何か悩み事ですか
西園寺秋華
西園寺秋華
え?……なんで?
雪平蒼真
雪平蒼真
何年一緒にいると思ってるんです?
顔を見ればすぐに分かりますよ
ベッドの上で本を読んでいた蒼真は、パタンと本を閉じて立ち上がると私に向かって歩いてくる。
西園寺秋華
西園寺秋華
なんでもお見通しだね
西園寺秋華
西園寺秋華
実は如月さんからデートに誘われたの
どうしようかなって迷ってて……
雪平蒼真
雪平蒼真
……如月様は申し分のない
相手だと思いますよ
雪平蒼真
雪平蒼真
結婚する上で、如月様以上の方は
そうそう現れません
雪平蒼真
雪平蒼真
男の私から見ても
本当によく出来た方だなぁと……
西園寺秋華
西園寺秋華
っ、もういい!!
雪平蒼真
雪平蒼真
え?
西園寺秋華
西園寺秋華
私が聞きたかったのは
そんな言葉じゃなくて……
本当は、一言、デートなんか行くなって
蒼真に引き止めて欲しかったの
分かってる。
全部、私のワガママ。

執事を完璧にこなす蒼真に、どうにか幼なじみだった頃を思い出して欲しくて。

あわよくば、私のことを見て欲しくて。


必死にもがいて、足掻いて、勝手に傷ついて。
西園寺秋華
西園寺秋華
ごめん、今の忘れて?
驚いたように固まってしまった蒼真を取り残して、私はそのまま蒼真の部屋を後にした。


〜翌日〜
春香
春香
今日のワンピースも似合ってます
春香
春香
あとはアクセントに
赤いバッグを合わせて……っと
春香
春香
上出来です!
……デート、行かれるんですね
西園寺秋華
西園寺秋華
春香ちゃんありがとう!
今日のコーデすっごく可愛い〜!
西園寺秋華
西園寺秋華
蒼真にも応援されちゃったら
もう、前に進むのみかなって
楽しんでくるね!
心配そうに、だけど静かに頷いて私を見送る春香ちゃんに微笑んで玄関へと向かえば、

見慣れた後ろ姿にギュッと胸が軋む。
雪平蒼真
雪平蒼真
……おはようございます
お嬢様、今日はどちらまで?
私を見て、一瞬揺れた蒼真の瞳。
西園寺秋華
西園寺秋華
今日はデートだから
……ついてこないでね
雪平蒼真
雪平蒼真
……如月様とですか?
西園寺秋華
西園寺秋華
そう!如月さんと
……じゃ、行ってくるね
雪平蒼真
雪平蒼真
お気をつけて
行ってらっしゃいませ、お嬢様
ぎこちなく私を見送る蒼真に、昨日蒼真に言った言葉たちが蘇る。


……やっぱり、最後まで蒼真は私を引き止めてはくれないんだね。

きっと、蒼真とは結ばれない運命なのかな。
どこかで分かってはいたけど、胸が苦しくてしょうがないよ。

プリ小説オーディオドラマ