第39話

EP36 歓声の隙間に
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2025/08/19 04:46 更新


※このエピソードには、架空の地域における地震災害描写が含まれます。

現実の災害により被害を受けたすべての方々に、心よりお見舞い申し上げます。

本作は、あくまでフィクションの物語でありながら、災害を通して“自分にできること”を考えるきっかけとなることを願い、制作しています。

なお、現実に災害が起きたこのタイミングで公開することについて、制作側としても強い葛藤がありました。

それでも、いつか誰かの防災意識の一助になることを信じて、掲載を決断しました。

不安を感じられる方は、どうか無理せず、このエピソードの閲覧をお控えください。

「ねぇちょっと~、誰かいる〜? 玄関、開けてくれると助かるんだけど〜?」



穏やかな午後のシェアハウスに、ひょいっとした明るい声が響いた。



ちょうどリビングから廊下を覗いていた奏が、小さく首を傾げる。



「……橘さん?」



急ぎ足で玄関へ向かい、ドアを開ける。



「やっほ~! 奏ちゃん、お邪魔するわねぇ」



「橘さん、そんなに慌ててどうしたの?」



「ちょっと! 全員リビング集合! めっっっちゃくちゃ大事なお知らせがあるの〜!」



リビングにいた数名が、驚いたように顔を上げた。



「橘さん、どうしたんですか?」



「お知らせって……なになに?」



次々と集まってくるメンバーたち。






橘はふぅと息を整えると、胸元から一枚の用紙を取り出して、リビング中央に掲げた。






「『Vireliahs+ヴィレリアス プラス』──冠番組、決定しましたァァァァ!!」



「……っ!」

「か、かんむりばんぐみ……!?」



その場にいた全員が、一瞬固まったように沈黙し、それから──



「マジで!?」

「やったじゃん……!」

「ついに……!」



歓声と拍手が同時に起こる。



七瀬も、思わず口元を押さえてから微笑んだ。



「本当に……すごい。みんな、おめでとう」



橘は鼻をすんっと鳴らすと、腰に手を当ててにっこり。



「ほらね? やるって言ったらやるんだから。あんたたちの努力、ちゃんと伝わってるのよ。……この前の深夜ドラマ、バズってたでしょ? 反響もよかったし、番組サイドも動いたのよ」



「ってことは……あれがきっかけ?」



「正解。今度はあんたたちメインの冠番組。“Vireliahs+ヴィレリアス プラス”って名前で、いろんなことにチャレンジしてもらう予定よ。トーク、バラエティ、音楽、地域ロケ──なんでもアリ!」



メンバーたちは顔を見合わせ、湧き上がるように笑顔を浮かべた。



「すご……これ、夢じゃない……?」

「やば、まじテンション上がる……!」



「……これって、うちの名前が付いてるってことですよね?」

「Vireliahs+って、やばすぎ……!」



興奮冷めやらぬ中、誰かが冷蔵庫から缶ジュースを持ってきて、自然と乾杯が始まる。



「絶対いい番組にしような!」

「うん、俺たちならできる!」



七瀬も、心の奥で小さく拳を握った。



──これが、彼らの未来をさらに広げる扉になるかもしれない。







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そのとき。



ふと、テレビから「ピピピッ」という警告音が響いた。



『……ただいまの地震情報です。××県北部で、震度3の地震を観測しました。……』



橘が持っていた用紙を胸元に戻し、七瀬と同時に画面に目を向ける。



静かに切り替わった速報画面には──聞き慣れた地名が映っていた。



それを見た七瀬の目が、すっと細められる。



「……あそこ……」



声にはならない、けれど明らかに何かを思い出すように、七瀬は画面を見つめていた。



ざわ……と、胸の奥で小さなざわめきが広がる。



浮かび上がる地名。あの土地。



ただの速報。けれど、心のどこかが不安を告げていた。



次の瞬間に続く、ほんの微かな──異変の予兆。

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