第43話

Episode42
40
2024/02/09 09:27 更新
行くぞ!
おう!
人間
あっおい!泥棒!
ダダダダダダッ
やべぇよ兄ちゃん、もう追いつかれちまう!
人間
さっさと売り物を返せ、汚いガキどもが!
今だソアレ!
ガスッ

その瞬間、子供を追いかけていた男に衝撃があった
人間
グッガハッ
すぐ逃げるぞ!
ほら、ソアレも!
ソアレ
うん!
物心ついた時、私はスラムで暮らす1人の人間だった


スラムにはお金も家も着替えもない


毎日食べるものに困っては周りの子供と協力して盗みを働いた


そんなことをしても私たちの体はボロボロでいつも腹を空かしていた


盗みは失敗したら売り主やその仲間に殴られ蹴られ


成功したらスラムに住む大人に力で奪い取られる


残っていたとしてもスラムには子供もたくさんいる


正直、なんで盗みなんてことしているんだって思うでしょ?


答えは私たちスラムの子供にはそれしかできないから


"スラムに住んでいる"


その事実が私たちから選択肢を無くす


働けば良いじゃないか、学校に行って勉強すれば良いじゃないか、人の為に尽くせば良いじゃないか


そんな綺麗事が通用すると思ってんのは平和な世界で生まれ育つことができた馬鹿共だけ


働く?


スラムで育った者は汚れた人殺しの可能性がある


学校に行く?


学校に行く金なんかない


人の為に尽くす?


殴られて蹴られて虐げられてきたのにそいつらの為に何かしてやりたい訳ないだろ


人殺しで金も無い、下手したら自分達に復讐を考える


そんな奴らを誰が受け入れようと思うんだ?


ああ、一応いるかもね


よっぽどの聖人か、「人助けする自分偉い!」って思いたいクズか


どうせ心の中で考えてんのは「可哀想、惨め」


そんなのに受け入れられるくらいなら


私たちは望んでスラムで暮らす


まあ、でも割と幸せだった


私にとって何よりも大切なことは仲間たちと笑って生きていられることだったから

ソアレ
ほらほら、また1番だよ!
ソアレは足が速いなぁ
もうソアレに駆けっこで勝てる奴いないんじゃない?
ソアレは前から駆けっこだけは得意だもんね〜
ソアレ
駆けっこだけじゃないもん!
そうだね、殴り蹴り走り噛み……
少なくとも普通の女の子がやるようなことじゃないわね
ソアレ
うるさいうるさい
ま、お前はそのまんまでいいんだよ
俺たちはずっと仲間だからな!
















そんな日常、簡単に壊れた





















ある日、私は仲間を失った





仲間と呼んだ彼らは私を恐れた
ソアレ
ね、ねぇ!
私が声をかけて返ってくる言葉は
く、来るな!
いやッ殺さないでッ
俺たちの街から消えろ!!!

         "バケモノ"






今まで使うことのなかったその言葉はいつの間にか私を指す唯一の言葉となった





そんなことになった原因、それは______



















人間が一生手に入れることのない蒼の翼







 





それは私を敵と認識するには十分な理由だった








ソアレ
…………
人間
うわっ"バケモノ"だ
人間
早くどこか行ってくれないかしら
人間
いつ暴れて殺されるか……気が気じゃない
出歩くたび、人間はバケモノを避ける
ソアレ
ギロッ
人間
ビクッ
人間
こ、こっち見たわ
人間
悪魔が………
???
…………
だが、その日は違った


1人、こちらをじっと見る者がいた


黒いローブをその身に纏う高貴な人間だ
ソアレ
???
ねぇ、君もしかして………
人間
お、おい、やめとけ。あいつはバケモノだぞ!
???
バケモノ?
人間
あいつは人間じゃない!あんな……あんな気持ち悪い羽が生えてんだぞ!
ソアレ
???
へぇ………
その人間は目を細め私を見る


ソアレ
(またか、こいつもまた私を敵にするんだ)



???
なら、私も"バケモノ"だね
バサッ


その人間、いやその"バケモノ"は羽織っていた黒いローブからそれよりも遥かに黒い、言わば漆黒の翼を日の目に晒す

ソアレ
.........は
人間
こ、こいつも羽が.......
そうさ、私は君等が言うバケモノ
あの子と同じ、人間じゃない生き物だ
得体のしれない不気味な笑顔で彼女は人間に言う


雰囲気で分かった


このバケモノは何百、何千いや.......何万もの人間を殺してきた本物の殺人鬼だ
ソアレ
(………怖い。)
本能が言っている
ソアレ
(私なんかじゃ敵わない、逃げれない。逃げたら殺される)
______気がつくとその場にいたはずの人間は消え、私と彼女そのバケモノたった二人になっていた
君は........逃げないの?
ソアレ
.........逃げたら生かしてくれますか?
やっぱりそうだ......
ねぇ
ソアレ
何ですか
君、私の旅について来ない?
ソアレ
は?
ソアレ
なんで.........
君がどっちを選ぼうが構わない
だが、君はここで一度私に命を救われたということを忘れてはならない
ソアレ
........
悩んでる?
ソアレ
はい
じゃあいいことを教えてあげる
ソアレ
いいこと?
君は吸血鬼だ
そして私はこの世界に存在する何者よりも吸血鬼のことを知っている
それこそ、最高神である龍神よりもね
ソアレ
.........行く
よし
君の名前は?
ソアレ
Soareソアレ
彼女は微かに目を見開いた
.........そっか、ソアレね
なんとも皮肉なものだ
ソアレ
え?
その名は自分で?
ソアレ
いや、人間の子供につけてもらった
ほう、ソレとの関係は?
ソアレ
仲間、だと思ってたんだけどなぁ......
ふ〜ん
それじゃあ、その名前は好き?
ソアレ
嫌い、大っキライ!!!
なら、名前を変えようか
ソアレ
え?
Lunaルナはどう?
ソアレ
ルナ......
ルナ
ルナ!
気に入った?
ルナ
うん!
ルナ
ありがとう!
ルナ
ねぇ、あなたの名前は?
私?
私は_______
ルナ
あなたもいい名前だね
ありがとう
その時、私は1人の吸血鬼"Luna"となった

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