第32話

#30:あの「最高」をもう一度!
56
2026/06/02 08:07 更新
…これは9月頃の出来事。

毒ヶ井 千波
毒ヶ井 千波
私はぽかんと口を開けたまま、
秒針がカチ、カチと音を立てるのを見つめていた。
……
もう、終わってしまった。
呆気なかった、8/8。

…次の大会、進みたかったなぁ
東雲 のめ
東雲 のめ
…し、死体?
私の力の抜け具合を見てなのか、たまたま
居合わせたのめがそう言う。
毒ヶ井 千波
毒ヶ井 千波
…3年生は勉強、ねぇ…
毒ヶ井 千波
毒ヶ井 千波
内部進学には必要ないっつの…
東雲 のめ
東雲 のめ
私の落ち込みまくった様子を目の当たりにした
のめは何も言えなさそうだった。

此奴も落ち込んでるだろうに、
私に何言おうとしてんだか。
毒ヶ井 千波
毒ヶ井 千波
…でも、コース別に別れてるし
特進コースの人は進学校…行くし…。
東雲 のめ
東雲 のめ
…まだやれることはあるんじゃない?
中庭のベンチ。隣に座ってきたよ、此奴。
普段なら何かしら文句垂らしてたけど、
今日は、今だけは、する気力も起きなかった。
毒ヶ井 千波
毒ヶ井 千波
…大会のために全部尽くしてきたのに。
東雲 のめ
東雲 のめ
…俺も、俺もそう、だけど…
毒ヶ井 千波
毒ヶ井 千波
東雲 のめ
東雲 のめ
千波、のめ
…?
この沈黙は何も言えない沈黙なのか、
はたまた音楽室から漏れ出る、息を吸う音に対してか。
誰かの声
……スゥ
誰かの声
3年生〜!!先輩〜!
集合〜!!!
辺り一辺がびりびりとした衝撃音に包まれた。

腹から出てきましたと言わんばかりの強い声。

その声を頼りに、私達は音楽室へ駆け出した。
毒ヶ井 千波
毒ヶ井 千波
…で、どういうこと…?
東雲 のめ
東雲 のめ
…俺ら何も聞かされてないけど…
3年生用に用意されたような、50人分くらいの椅子。
すると先生が駆け足で私の方へ向かってきた。
顧問
…もう皆聞いてる?まだ?
顧問
千波は?まだ聞いてない?
毒ヶ井 千波
毒ヶ井 千波
え、あ、はい…?
あまりにも勢いがあるから驚いた。なにがあるの…?
顧問
…まあいいや、全員揃ってから言う。
毒ヶ井 千波
毒ヶ井 千波
…?
東雲 のめ
東雲 のめ
…なんだったの?
毒ヶ井 千波
毒ヶ井 千波
…いや、まだだって。
東雲 のめ
東雲 のめ
…?
顧問
…とりあえず椅子、座っといて。
千波、のめ
は、はい…?
―――――数分後

全員が揃ってまもなく、先生が前に出た。
顧問
まず2.3年生、改めて県大会お疲れ様。
顧問
…そして
全員が息を呑んだ。
顧問
管楽コンテスト予選通過、おめでとう
毒ヶ井 千波
毒ヶ井 千波
…え?
管楽…コンテスト?

コンクールの次におっきい、あの大会?
顧問
最優秀賞で通過しました。
先生のいつもの淡々とした口調の裏には、
とてつもなく大きい気持ちがあったんだと思う。
顧問
……全国大会、出場だよ。
東雲 のめ
東雲 のめ
…は
毒ヶ井 千波
毒ヶ井 千波
…ぁ
隣でそれを聞いていた海、テス、なんならあなたの下の名前までもが
その事実に感動、あるいは驚きを隠せずにいた。
会津 海
会津 海
まじで
木村 テス
木村 テス
…!
(なまえ)
あなた
顧問
……
毒ヶ井 千波
毒ヶ井 千波
…やった、やった…!
私の声に重なり、歓喜の声が溢れてくる。
誰かの声
やった〜!
誰かの声
…本当に…?
誰かの声
行けるの、俺たちが…!
東雲 のめ
東雲 のめ
…夢?
会津 海
会津 海
……多分違う
木村 テス
木村 テス
多分かよ…
――――1ヶ月後
昨日も、みんな笑ってた。
ずーっと、笑ってるの、あの先輩たち。

…でもね、コンクールの時の笑顔とは違う。
本当の楽しそうな笑みに見えた。

だから、私のお節介に必要性はない。

ただ、あの4人の幸せを間近で見ていたいだけだから。
(なまえ)
あなた
…楽しみだなぁ、どっちも。

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