金賞を受賞した後、金賞6団体の内3団体が
県大会に出場できる。
いわゆる、「地区代表」の座への闘いもあるんだ。
今まで、その座に着くまでの、階段のような
道のりの中で、そこの段だけ果てしなく高かった。
…もちろん、みんなと一緒だから。
甲高い嬉しさからの声。
私は今年、それを経験できるだろうか。
涙の音も聞こえる。
…さて、残るは後ろの番号の団体のみ。
その中で金賞をとったのは私達ともう1団体。
ここで出た声はそれだけだった。
部員のみんなはもっと、わーっと喜んでいるのに。
のめがこちらを向いている。
なんだか驚いているような顔つきで。
私の頬には一筋の涙が流れていた。
これは嬉しさによるもの?驚きによるもの?
それとも…。
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この出来事の1週間後。今日は県大会。
地区大会の時よりも最高の演奏だ。
誰も文句のない、満足の行く演奏だった。
私の足音とともに雰囲気は一変し、
会場へ足を進めた。
今日は涙の変わりに冷や汗が流れ落ちる。
この場は地区大会比にならない強さの学校が
そろう、県の代表を決める闘いだ。
私たちの街で強いと有名なあの学校でさえ、
銅賞だった。
ここで初めての金賞。
…大丈夫。焦らなくてもいい。
隣でボソッとした声が聞こえた。
その声を聞き、私は手と手を握りしめた。
あーあ…。
今度は泣かないって決めてたのに。
もう一方の隣であるテスは何一つ表情を変えない。
弱々しく、優しい声が、微かに聞こえた。
拳を握りしめ、爪がくい込んで少し痛い。
だけど、そのくらいしないと
この気持ちには耐えられない。
楽しそうな声が響く。
次呼ばれるか否か。
それで全てがわかる。
掠れて声も出なかった。
周りの音も聞こえなかった。
聞こえるようになってから、
周囲の嬉しそうな声の全てが憎たらしくなった。
ダメ金、だ。
目が腫れてるのがわかる。
目に涙が染みて違和感がある。眼が赤い。
頬に乾いた涙の跡が残ってる。脈が少し速い。
こんな風な形で泣くなんて、想像もしてなかった。
海が私を励まそうとしてくれた。
優しい声が耳に響く。此奴だって悔しいはずなのに。
なんでこんなこと言っちゃうんだろう。
海は私の事励ましてくれているのに、
なんでこういう時素直になれないんだろう。
後輩に助けられてばかりじゃダメなのに。
…ダメだなぁ、私。
此奴の言葉で、涙が頬にもっと、もっと
つたっていってしまった。
これからは、やりたいことやるんだ。
今年で終わりなこと、部活内でもまだまだ
沢山あるだろ。私、気づいてなかった。
今すぐ立ち直るのは難しいかもしれない。
すぐにお前たちに追いつけるかな。わかんない。
だけど、その時まで、気長に待っててほしいです。


















編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!