あなたside
にれくんを残し、商店街へ走り出した。
けどどうしよう……。
風鈴の誰かを呼ぼうにも、皆今は学校。
来るのに多少の時間がかかる。
かといって街の人に助けを求めるわけにもいかない。
焦りで考えがぐちゃぐちゃになる。
その時…………。
あなた「っ!」
知った後ろ姿。
あの背中は…………。
グイ!
私は強くその背中の裾を掴んだ。
桜「のぉおわぁ!!!」
急に掴んだから驚いたのか、何故か腕いっぱいの荷物を落とす彼。
桜。
桜は振り返り私の方を向く。
けどどうしよう。
どうやって伝えよう。
言えばきっと桜は助けてくれる。
けどそれを伝える方法を私は今持ち合わせて無い。
手話で伝えたって余計混乱させちゃう。
しかし次の瞬間………。
何も言わない私に桜は…………。
桜「………何処だ?」
あなた「っ!?」
何も伝えてない。
なのに、全部わかったみたいに…………。
それに驚きながらも、私は桜の腕を掴みにれくんのとこに案内した。
・
・
・
ドッ
ゴッ
ドカッ
あの場所戻ると…………。
相手にしがみついているにれくん。
それを引き剥がそうと、拳を振る相手。
そして両手を組み、それが振り下ろされる次の瞬間………。
ゴッ!!
楡井「っ!?」
あなた「っ!」
ズザザァァ
さっきまで隣にいたはずの桜はいつの間にか………。
相手に飛び蹴りを喰らわせていた。
吹き飛ぶ相手。
楡井「………なんでお前が………オレを助けるんすか」
桜「………………」
「何してくれてんだてめぇ!!」
「てめーも風鈴か!!」
「お仲間が助けに来たのか?一人で!」
桜「助ける?仲間?カン違いすんなボケ………弱いくせに強いとカン違いしてるヤツが気に入らないだけだ。吐き気がする」
「なんだとこのクソガキがぁ!!」
相手の一人が桜に向けて拳を上げる。
楡井「一人じゃ無理っす!!」
地面に倒れる相手。
傷一つない桜。
昨日も思ったけど、やっぱり強い。
桜はあっという間に相手を倒してしまった。
楡井「………す、凄い……」
桜「んだよ………マジで弱ぇなぁ……」
楡井(一瞬………ほんとにたった一瞬で………この人いったい…………)
クル
ビクッ
ケンカが終わると桜は振り返り、こっちに歩いて来た。
にれくんは何故がビクビクしている。
そしてその横を、桜は何も言わずに通り過ぎる。
楡井「ありがとう………ございました……がっかりしたっすよね……こんなヤツがボウフウリンに。風鈴にいたなんて………」
桜「カン違いすんな……オレは呼ばれただけだ。助けようと思って来たわけじゃねーし……見かけだおしはどこにでもいる」
楡井「……………」
桜「どんな理由で風鈴に来たかは知らねーけど……自分の力量はわかっておけ……」
楡井「………オレ、中学の頃……毎日毎日パシられて、なぐられて………言いなりになるしかなかった……そんなオレを助けてくれたのが……風鈴の人だったんす……」
ずっと地面に膝をつくにれくん。
そこにそっと近づき、腰を下ろす。
顔を下げるにれくんの表情は分からない。
でも………
ポロ……
ポロポロ
涙が流れている事だけは分かった。
楡井「普通なら絶対怖いとしか思わないような人が、かっこよかった。オレもああなりたいって………強くて、かっこよくなりたいって風鈴に来たっすけど………全然……ダセェなぁ………」
桜「……………」
あなた「……………」
にれくんが何をいっているのか、分からない。
でも、何でケンカの苦手なにれくんが風鈴に入ったのかは知ってる。
だから………。
桜「ケンカが弱ぇくせにめそめそしてんなよ。余計弱く見えるぞ………でもまぁ………ダサくはねぇんじゃねぇの?」
楡井「っ……」
桜が何か言ったのか、顔を上げたにれくん。
そして、私はその顔にそっとハンカチを当てた。
楡井「あなたさん………」
あなた《ありがとう。助けてくれて》
楡井「っ!」
そう伝えると、何故がまた泣き出すにれくん。
でもこの涙はきっと、さっきとは違うはず………。
そして今度は桜に向き直り。
あなた《ありがとう》
手話と口の動きで感謝を伝える。
伝わったか少し不安だったけど………。
伝えた後背を向けた桜の耳が赤かったのを、私は見逃さなかった。
そして、桜が歩き出したその時……。
楡井「さくら!………さん……」
にれくんは立ち上がり、多分桜を呼んだのか桜の足が止まった。
桜「…………なんだよ」
楡井「えっと………」
桜の表情に少したじろぎながらも、にれくんはあるものを取り出した。
そして一気に桜と距離を積める。
楡井「身長・体重・血液型・趣味・特技・好きなタイプは!?」
桜「はぁ!?」
どうやらいつものあれが始まった様だ。
楡井「身長はオレより少し高くて169cm。筋肉多く脂肪少なめ。59kgくらいすね………」
桜「おい………」
楡井「足は26.5……まだまだ身長伸びるっすね!!」
ドカッ
桜「キモイ!さわるな!はかるな!」
急で驚いたのか、にれくんをどつく桜。
楡井「す……すんません。オレ……いいな……かっこいいなった思う人のデータ集めるのが好きなんす……」
にれくんがこれをやる理由を聞いたのか、また顔を赤くする桜。
桜「か、勝手にしろ……」
楡井「はい!間近で見させてもらいます!ついでといってはなんですが、道案内しますよ!」
桜「は?」
楡井「オレが学校まで行く道がわかってねーって言いたいのか………」
楡井「あぁ……いえ……そうではなく……ケンカでは力になれないかもですが………街のことや人のこととか、案内しますよ!てっぺんまで!」
桜「…………」
指を掲げるにれくん。
そして、今度は無理やり桜の腕を引き駆け出した。
その2人の背中を見て、何処か嬉しくなる自分がいた。
てっぺんを目指す桜。
そしてその案内役になるであろうにれくん。
2人の出会いは存在はきっとこれから………。
お互いにとってかけがえのないものになる。
きっと………。
私は勝手にそう思ってしまった。
まぁ、そう思える人はこれからどんどん増えていくと思うけど……。












編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!