前の話
一覧へ
次の話

第6話

第2話 憧れのヒーロー②
9
2026/03/07 12:59 更新
あなたside





にれくんを残し、商店街へ走り出した。



けどどうしよう……。



風鈴の誰かを呼ぼうにも、皆今は学校。



来るのに多少の時間がかかる。



かといって街の人に助けを求めるわけにもいかない。



焦りで考えがぐちゃぐちゃになる。



その時…………。







あなた「っ!」







知った後ろ姿。



あの背中は…………。







グイ!







私は強くその背中の裾を掴んだ。







桜「のぉおわぁ!!!」







急に掴んだから驚いたのか、何故か腕いっぱいの荷物を落とす彼。



桜。



桜は振り返り私の方を向く。



けどどうしよう。



どうやって伝えよう。



言えばきっと桜は助けてくれる。



けどそれを伝える方法を私は今持ち合わせて無い。



手話で伝えたって余計混乱させちゃう。



しかし次の瞬間………。



何も言わない私に桜は…………。







桜「………何処だ?」



あなた「っ!?」







何も伝えてない。



なのに、全部わかったみたいに…………。



それに驚きながらも、私は桜の腕を掴みにれくんのとこに案内した。

































ドッ



ゴッ



ドカッ







あの場所戻ると…………。



相手にしがみついているにれくん。



それを引き剥がそうと、拳を振る相手。



そして両手を組み、それが振り下ろされる次の瞬間………。







ゴッ!!



楡井「っ!?」



あなた「っ!」



ズザザァァ







さっきまで隣にいたはずの桜はいつの間にか………。



相手に飛び蹴りを喰らわせていた。



吹き飛ぶ相手。







楡井「………なんでお前が………オレを助けるんすか」



桜「………………」



「何してくれてんだてめぇ!!」



「てめーも風鈴か!!」



「お仲間が助けに来たのか?一人で!」



桜「助ける?仲間?カン違いすんなボケ………弱いくせに強いとカン違いしてるヤツが気に入らないだけだ。吐き気がする」



「なんだとこのクソガキがぁ!!」







相手の一人が桜に向けて拳を上げる。







楡井「一人じゃ無理っす!!」




















地面に倒れる相手。



傷一つない桜。



昨日も思ったけど、やっぱり強い。



桜はあっという間に相手を倒してしまった。







楡井「………す、凄い……」



桜「んだよ………マジで弱ぇなぁ……」



楡井(一瞬………ほんとにたった一瞬で………この人いったい…………)



クル



ビクッ







ケンカが終わると桜は振り返り、こっちに歩いて来た。



にれくんは何故がビクビクしている。



そしてその横を、桜は何も言わずに通り過ぎる。







楡井「ありがとう………ございました……がっかりしたっすよね……こんなヤツがボウフウリンに。風鈴にいたなんて………」



桜「カン違いすんな……オレは呼ばれただけだ。助けようと思って来たわけじゃねーし……見かけだおしはどこにでもいる」



楡井「……………」



桜「どんな理由で風鈴に来たかは知らねーけど……自分の力量はわかっておけ……」



楡井「………オレ、中学の頃……毎日毎日パシられて、なぐられて………言いなりになるしかなかった……そんなオレを助けてくれたのが……風鈴の人だったんす……」







ずっと地面に膝をつくにれくん。



そこにそっと近づき、腰を下ろす。



顔を下げるにれくんの表情は分からない。



でも………







ポロ……



ポロポロ







涙が流れている事だけは分かった。







楡井「普通なら絶対怖いとしか思わないような人が、かっこよかった。オレもああなりたいって………強くて、かっこよくなりたいって風鈴に来たっすけど………全然……ダセェなぁ………」



桜「……………」



あなた「……………」







にれくんが何をいっているのか、分からない。



でも、何でケンカの苦手なにれくんが風鈴に入ったのかは知ってる。



だから………。







桜「ケンカが弱ぇくせにめそめそしてんなよ。余計弱く見えるぞ………でもまぁ………ダサくはねぇんじゃねぇの?」



楡井「っ……」







桜が何か言ったのか、顔を上げたにれくん。



そして、私はその顔にそっとハンカチを当てた。







楡井「あなたさん………」



あなた《ありがとう。助けてくれて》



楡井「っ!」







そう伝えると、何故がまた泣き出すにれくん。



でもこの涙はきっと、さっきとは違うはず………。



そして今度は桜に向き直り。







あなた《ありがとう》







手話と口の動きで感謝を伝える。



伝わったか少し不安だったけど………。



伝えた後背を向けた桜の耳が赤かったのを、私は見逃さなかった。



そして、桜が歩き出したその時……。







楡井「さくら!………さん……」







にれくんは立ち上がり、多分桜を呼んだのか桜の足が止まった。







桜「…………なんだよ」



楡井「えっと………」







桜の表情に少したじろぎながらも、にれくんはあるものを取り出した。



そして一気に桜と距離を積める。







楡井「身長・体重・血液型・趣味・特技・好きなタイプは!?」



桜「はぁ!?」







どうやらいつものあれが始まった様だ。







楡井「身長はオレより少し高くて169cm。筋肉多く脂肪少なめ。59kgくらいすね………」



桜「おい………」



楡井「足は26.5……まだまだ身長伸びるっすね!!」



ドカッ



桜「キモイ!さわるな!はかるな!」







急で驚いたのか、にれくんをどつく桜。







楡井「す……すんません。オレ……いいな……かっこいいなった思う人のデータ集めるのが好きなんす……」







にれくんがこれをやる理由を聞いたのか、また顔を赤くする桜。







桜「か、勝手にしろ……」



楡井「はい!間近で見させてもらいます!ついでといってはなんですが、道案内しますよ!」



桜「は?」



楡井「オレが学校まで行く道がわかってねーって言いたいのか………」



楡井「あぁ……いえ……そうではなく……ケンカでは力になれないかもですが………街のことや人のこととか、案内しますよ!てっぺんまで!」



桜「…………」







指を掲げるにれくん。



そして、今度は無理やり桜の腕を引き駆け出した。



その2人の背中を見て、何処か嬉しくなる自分がいた。



てっぺんを目指す桜。



そしてその案内役になるであろうにれくん。



2人の出会いは存在はきっとこれから………。



お互いにとってかけがえのないものになる。



きっと………。



私は勝手にそう思ってしまった。



まぁ、そう思える人はこれからどんどん増えていくと思うけど……。














プリ小説オーディオドラマ