あなたside
あなた《いってきます》
梅斗「いってらっしゃい」
菊乃「気をつけてね」
予約の花束を作るお爺ちゃん。
そして店前を掃き掃除するお婆ちゃん。
2人に外出する事を伝え、外へ出る。
チリン
チリーン
風鈴が風に揺れ、私には聞こえないけど………。
でも確かに音を奏でていた。
商店街は相変わらず賑わいを見せていた。
ずっとこの街に住んでいる私からしたら、慣れた光景だけど………。
でもそれでも何故か感じるこの街の温かさは私は好きだ。
そして私は今日の目的地。
ある場所を目指し、足を進めた。
・
・
・
温かいこの街。
でも、2年前まではそうじゃやなかった。
いろんなチームやギャングのケンカや抗争で、街の治安は最悪だった。
それを変えたのが、私が今向かう先………。
風鈴高校の生徒たち。
最近ではだいぶ治安も良くなって、街はもっと明るくなった。
はずなんだけど…………。
「ねーねーそこの子。この後俺らとどう?」
「めっちゃ可愛いね!写真いい?」
あなた「………………」
目の前には、背の高いガラの悪そうな男たち。
雰囲気からしてナンパである事は間違い無さそう。
昨日に引き続き今日も………。
治安が良くなったっていっても、まだこう言う人たちはそれなりにいる。
「ねーねー無視しないでよ」
ガシッ
あなた「………っ……」
ずっと無視してるのについてくる。
掴まれる腕。
振り払って逃げても足の速さで勝てるわけがないし…………。
ケンカなんてもっと無理。
どうやって振り切ろうか………。
いっそ、"耳"のことを話してしまおうか考えていたその時……。
バッ
?「離してください!」
あなた「っ!?」
?「あなたさん、いやがってるじゃないですか!!」
目の前に現れたよく知る制服。
けどよく知ってる広い背中とはちょっと遠くて………。
少し小さいその背中。
でも、私を守るように手を広げるその姿。
あなた《にれくん!?》
知った姿。
彼は楡井秋彦くん。
私と同じ歳の少年。
「何だお前?」
「ヒーロー気取りか?」
「どけよ。お前に用はなーんだよ!」
ドカッ
楡井「っ!?」
あなた「っ!」
向けられた拳。
床に転がるにれくん。
駆け寄ろうとすると………。
「待って待って。君はこっち」
腕を掴まれ、距離を詰められる。
腕を振り解こうにも、力で勝てるわけが無い。
周りに人は私たち以外なくて、助けを呼ぶこともできない。
その時…………。
ガッ……
楡井「離して……ください……」
起き上がり、相手を掴むにれくん。
その拍子に掴まれていた力が緩み、その隙に私は腕をはらった。
楡井「あなたさん、いってください!」
離れた瞬間、何か叫ぶにれくん。
でもその表情が何を言っているか、すぐに理解し私は商店街に向かって走り出した。
桜side
ガサガサ
何だこの状況………。
両腕いっぱいの紙袋。
つーかなんだよこの街の人間は。
馴れ馴れしすぎるだろ。
オレみたいなヤツに………。
オレ………みたいなヤツに………。
『決めつけるのは早いんじゃない?』
決めつけてたのか………。
あんな顔、向けられるわけないって………。
荷物を持つ手に力が籠る。
その時………。
グイ
桜「のぉおわぁ!!!」
バサバサ
急に掴まれた事に驚き、持っていた荷物を全部落とす。
そして振り返るとそこには…………。
あなた「………っ……」
桜「お前…………」
昨日の女。
確か耳が聞こえないとか言う………。
強くオレの裾を掴む手。
走って来たのか、少し上下する肩。
そしてその表情は…………。
桜「………!」
昨日見たものとは全然違って……。
困っているのか………眉が下がり何かを訴えていた。












編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。