芹澤side
大声でそう言って、環さんは自転車を漕ぎだす。
俺は慌てて土手を登ったけど、見えたのは、ずっと遠くを走っていく兄妹と猫の背中と、自転車でそれを追う環さんの姿だった。
3人と1匹は、こちらに見向きもしないように振り返らない。
俺は、決裂してた仲を仲裁しようと、環さんの世代であろう曲をかけつづけ、突然に愛車を失い、しまいには置き去りにされたけど、どこか爽快な気分だ。
ポケットから煙草を取り出し、口にくわえて火をつけた。今までさして美味いとも感じなかったのだが、その煙は、初めて感じる伸びやかな達成感のようなものを、全身に届けてくれた。
NOside
乗りなさい、と2人に言った後は1言も口をきかず、環はただただ自転車を漕ぎ続けていた。
細い道路の両脇には背の高いススキが1面に茂っていて、電柱だけが途切れずに立っている。
鈴芽の目の前で自転車を漕ぎつづける環の背中は、白いタンクトップに汗が滲んでおり、首筋からは玉のような汗が、ひっきりなしにころころと流れていた。鈴芽がいつか見た環の背中より、少し小さく感じられた。
そういえばといった感じで、環が前カゴに押し込まれたように座っている2匹の猫を見た。
鈴芽はそう言って、環の背中にぴたりと頬をつけた。椿輝は鈴芽の後ろに乗っており、顔をつけられなかったが、1言では片付けられないほどの感謝を環さんに感じていた。
2人ら声を出さずに頷いた。ずっと遠くに、防波堤の灰色の壁が見え始めていた。
ほんっとうに!ほんっとうにすみませんでしたぁぁ!!
約二週間、始めの一週間は本当に体調不良だったんですが、例のサボり癖が出てしまい(出してしまい)、一週間も投稿してませんでした。本当に申し訳ありません。
もしかしたら文字面だけでは三人の乗っている位置が解り難いかなと思うので、一応書いておきます。後ろから『椿輝、鈴芽、環』の順です。環さんが自転車を漕いでいて、鈴芽がその直ぐ後ろに、椿輝君が後ろの恐らく荷物を置くであろう場所に座ってます。「落ちるんじゃ…」「法律的にアウトじゃ…」「周りからの目とか…」そんなの知りません。そう思った方、これは二次元です。現実だと確実に罰金案件ですが、此処では行ってないられません。ご都合です。
次回、『故郷』。お楽しみに












編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!