第25話

5日目『12年ぶりの里帰り』
15
2026/01/19 15:00 更新
芹澤side
芹澤朋也
え…走るって、え、まじ!?
岩戸環
!(草に埋もれた自転車を引きずり出す)
芹澤朋也
え?どうしました?
岩戸環
芹澤くん、私も行くから!
芹澤朋也
ええっ!?
岩戸環
ここまで送ってくれてありがとね!
芹澤朋也
え、ちょっと
岩戸環
君、意外と良い先生になれるかもしれんね!
大声でそう言って、環さんは自転車を漕ぎだす。
芹澤朋也
ええ、ちょっとちょっとちょっと!
俺は慌てて土手を登ったけど、見えたのは、ずっと遠くを走っていく兄妹と猫の背中と、自転車でそれを追う環さんの姿だった。
芹澤朋也
…なんだったんだ、あの3人
3人と1匹は、こちらに見向きもしないように振り返らない。
芹澤朋也
ふっ、はははは…っ!
俺は、決裂してた仲を仲裁しようと、環さんの世代であろう曲をかけつづけ、突然に愛車を失い、しまいには置き去りにされたけど、どこか爽快な気分だ。
芹澤朋也
いいなあ、草太のやつ!
芹澤朋也
(俺はたぶん、なにかの役割を果たしたんだろうな)
ポケットから煙草を取り出し、口にくわえて火をつけた。今までさして美味いとも感じなかったのだが、その煙は、初めて感じる伸びやかな達成感のようなものを、全身に届けてくれた。
NOside

乗りなさい、と2人に言った後は1言も口をきかず、環はただただ自転車を漕ぎ続けていた。
細い道路の両脇には背の高いススキが1面に茂っていて、電柱だけが途切れずに立っている。
鈴芽の目の前で自転車を漕ぎつづける環の背中は、白いタンクトップに汗が滲んでおり、首筋からは玉のような汗が、ひっきりなしにころころと流れていた。鈴芽がいつか見た環の背中より、少し小さく感じられた。
岩戸鈴芽
…環さん?
岩戸鈴芽
(環さん…どうしてこんなに必死なの…?)
岩戸環
…もういいわ
岩戸兄妹
え?
岩戸環
要するに、鈴芽、好きな人のところに行きたいっちゃろ?
岩戸鈴芽
え…ええっ!?
岩戸椿輝
はははっ!
岩戸環
なんか色々ぜんぜん分からんけど、要するに恋しちょるんやろ?
岩戸鈴芽
え、いや、れ、恋愛とかじゃないしっ!
岩戸椿輝
環さん、探偵になれるんじゃねえか?
岩戸環
ふふっ
岩戸鈴芽
///
岩戸環
ねえ、こん猫たちって…?
そういえばといった感じで、環が前カゴに押し込まれたように座っている2匹の猫を見た。
岩戸鈴芽
ああ…
岩戸椿輝
なんか、神さまなんだってよ
岩戸鈴芽
あ、気まぐれな?
岩戸環
気まぐれな神サマっ!?なんやとそれ?あっははっ!
岩戸鈴芽
(まぁそうだよね…)
岩戸椿輝
ふははっ!
岩戸環
あのね、駐車場で私が言ったことやけど…
岩戸環
胸の中で思っちょったことはあるよ…。…でも、それだけでもないとよ
岩戸兄妹
うん/ああ
岩戸兄妹
(分かってるよ)
岩戸環
ぜんぜん、それだけじゃないとよ
岩戸鈴芽
…私も。ごめんね、環さん
岩戸椿輝
…俺もだ。ごめん、環さん。ありがとう
鈴芽はそう言って、環の背中にぴたりと頬をつけた。椿輝は鈴芽の後ろに乗っており、顔をつけられなかったが、1言では片付けられないほどの感謝を環さんに感じていた。
岩戸鈴芽
(お日様に似た、安心させてくれる環さんの匂い。私の好きな、環さんの匂い…)
岩戸環
…12年ぶりの里帰りやね
2人ら声を出さずに頷いた。ずっと遠くに、防波堤の灰色の壁が見え始めていた。
ほんっとうに!ほんっとうにすみませんでしたぁぁ!!
約二週間、始めの一週間は本当に体調不良だったんですが、例のサボり癖が出てしまい(出してしまい)、一週間も投稿してませんでした。本当に申し訳ありません。

もしかしたら文字面だけでは三人の乗っている位置が解り難いかなと思うので、一応書いておきます。後ろから『椿輝、鈴芽、環』の順です。環さんが自転車を漕いでいて、鈴芽がその直ぐ後ろに、椿輝君が後ろの恐らく荷物を置くであろう場所に座ってます。「落ちるんじゃ…」「法律的にアウトじゃ…」「周りからの目とか…」そんなの知りません。そう思った方、これは二次元です。現実だと確実に罰金案件ですが、此処では行ってないられません。ご都合です。

次回、『故郷』。お楽しみに

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