第3話

Destiny ²
632
2024/02/01 10:33
きん、とした空気の中、夜道をとぼとぼと歩く。
寒い…いつの間にか、もう初雪が降る季節なんだ。
早く家に帰りたい。温かい風呂に浸かりたい。
心だけが家へと急いで、体は重怠いまま。
心做しか、家への道がとても長いように感じる。
そういえば、今日の免許書のお兄さん大丈夫かな。家へちゃんと帰れたかな。
ずっと10階で止まっているエレベーターを見つめながら、そんなことを考える。
階段で行ったほうが早いかな、けど、寒いよな。
早く、早く。
早く、ボムギュの顔が見たい。
エレベーターが軽快な音を鳴らして扉を開いた。
素早く6階のボタンを押して、エレベーターが上昇してゆく。
扉が空いたと同時に早足で部屋へと向かう。
S
ただいま…。
B
……!!おかえりなさぃ…!!
寒いにも関わらず、玄関の隅で小さく座っていたボムギュ。抱きついてきた時、首に触れた手が物凄く冷たかった。
毎日、遅くなると分かっていても、ボムギュは只管に玄関で待っていてくれる。
多くの多幸感を感じる反面、同時に罪悪感も残る。
時折、耳に掛かる吐息が擽ったい
B
あの、ケーキ作ったんです。
もうすぐ記念日だから。
苺ですよ、スビニヒョンが好きなやつと付け加えるとニコニコと笑って期待の眼差しを向けてくる。
褒めてほしいんだなぁ。コイツはいつまでも可愛いなぁ。
そう思いながらもありがとう、と撫でてやれば、少し照れくさそうに頭を掻くボムギュ。
S
お風呂、入った?
B
ううん、まだです。
S
じゃあ、一緒に入ろうか。
B
へっ…………。
わかりやすくみるみる顔を紅く染める様子がとても愛らしい。
思い出せば、恋人らしいコトはここ数ヶ月していないと気づいたのだ。
自身の仕事もあるが、お互いにどうも予定が合わなかったせいだ。
嫌かと訪ねれば、首を横に振るう。

B
ご、ごはん…作ったので……。
S
嘘。食べたいんだけど。
B
ふふ、温めてきますね。
付き合い始めたころは料理もできなかったボムギュがこんなにも成長するとは思ってもなかった。
いつの間にか、僕よりも料理が上手くなった。
チゲが温まり終わるのを見守るその後ろ姿を抱きしめたくなる。
あぁ、物凄く可愛い。可愛い
S
かわいい……。
B
ぅ、ゃ!?
気づいたらボムギュを抱きしめていた。
ちらり、と横顔を眺めると、林檎の様に赤くなった顔。
リップ音を立てて口づけを頬へ落とせば、また一段と赤くなった。
抱き締める力を強めると、
比例するように自身の腕を握る手から伝わる力も強まる。
B
チゲ……お風呂…
S
あとでいいから、ベッド行こう。
返事を返すかのように握ってきた手。
いつの間にか首まで赤くなったボムギュの身体に優しく手を重ねた。



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