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第6話

第3話
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2026/03/11 08:00 更新
─ 境界線の内側で ─

【白墨 side】

雄英高校に入るつもりは、あった。

理由は単純だ。
ここは、正義がもっとも“正しく”管理されている場所だから。

(……噂通りだな)

そう考えながら、校内の影に身を沈めて進んでいた。

監視。結界。警備動線。
どれも洗練されているが、
「守ること」を前提に作られている以上、
抜け道は必ず残る。

ただ──

気づいた時には、
ここまで来ていた。

瓦礫と通路が組み合わされた人工市街地。
人の気配が一気に増え、
同時に、外の世界から切り離された空間。

(……訓練施設、か)

ここまで入り込むつもりはなかった。
ましてや、生徒の訓練時間に重なるとは思っていなかった。

(……運が悪い)

足元で、墨がわずかに滲む。
感情が動いた証拠。

物陰から様子を窺った。

連携。判断。号令。
教えられた通りの動き。
無駄がなく、綺麗で、正しい。

(さすが、雄英)

感心はあった。
だが、それだけで通り過ぎるはずだった。
その時──
通路の向こうから、一つだけ違う視線を感じた。

ただ一人、
他の連中とは少し見方が違う目があった。

警戒ではない。
敵意でもない。

状況を、必死に“考えている”目。

(……面倒だな)

立ち止まる理由になるとは思っていなかった。
それでも、足が止まった。

声をかけたのは、ほとんど衝動だ。

「判断、遅いな」

少年の目が揺れる。

次の瞬間、墨が床を這った。
縛るためじゃない。
迷わせるためだ。

(……これでいい)

「ここ、訓練場だろ」

少しだけ、自嘲が混じる。

「……ヒーロー向きじゃないな」

別に否定するつもりはなかった。
ただ、そう見えただけ。

気配が増える。

(……そりゃあ来るよな)

教師。プロ。
対応が早い。

影に溶けながら、
最後にもう一度、少年を見る。

まだ、考えている目をしている。

(……やっぱり、面倒だ)

だが──悪くない。

雄英に来たのは、意図的だ。
けど、ここで誰かと交わるつもりはなかった。

それでも。

俺はまだ、その“線”を越える気はない。

影が消え、墨が引く。

境界線の内側で、
俺は今日も、その場所に立っている。

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