第2話

𝑷𝒓𝒐𝒓𝒐𝒈𝒖𝒆
19
2026/02/05 03:00 更新
─ 灰色 ─

夜の路地に、白墨は立っていた。
金属バットを肩に担ぎ、逃げ道を数える。

「……詰み、か」

ヒーローの声。正義の手順。
どれも『正解』だ。

足元で、墨が静かに滲む。
感情に反応する個性は、
諦めに近い彼の気持ちで一番よく動いた。

「俺、ヴィランじゃないんだけどな」

誰にも届かない独り言。

一歩踏み出し、バットを振る。
守るためでも、壊すためでもない。


──ただ、線を引くため。


灰色の影が立ち上がり、
ヒーローの動きが止まる。

迷い。
それは、正義が最も弱くなる瞬間だ。

次の瞬間、
衝撃音とともに視界が黒く染まった。


数秒後、路地は空っぽだった。

残ったのは、
墨の痕跡と白く擦れた金属の跡だけ。

彼は今日も、
ヒーローにもヴィランにもならず──
境界線の上を歩いている。

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