前の話
一覧へ
次の話

第5話

gn〘 五月雨 3 〙
154
2026/06/20 06:32 更新
✎‎𓂃  隣人 / ? / 夢主視点










あなた
  そういう冗談は
か、彼女さんに悪いですよ…
  



動揺を隠すように返すと、
言さんはきょとんと目を瞬かせた。


gn
  彼女…?  
gn
  いませんよ、そんな人…  



あまりにも、あっさりとした答え。

あなた
  え、…?  
gn
  どうしていると思ったんですか?  



不思議そうに尋ねられ
私は言葉に一瞬詰まりそうになるが…


あなた
  化粧水とか
そういう物が普通にあったり…
あなた
  それに、
すごく…優しいじゃないですか
あなた
  言さんなら、誰かに好かれていても
全然おかしくないんじゃないかなって
gn
  それが理由ですか?  


少し笑いを含んだ声。


gn
  まぁ、スキンケア用品は…
確かに不思議に思いますよね
gn
  これはシンプルに仕事の関係で
メイクしたりすることがあって…

ほんとに、自分用のものです
あなた
  …しごとで?  
gn
  はい、ですが…この話は
後で詳しくお話するとして…
gn
  僕を好いてくれてる人は
残念ながらいないと思いますよ?


言さんは、小さく肩をすくめる。






静かな沈黙に、
窓を叩く雨音が部屋に響く。






なんとなく
気まずい雰囲気になってしまったかもと思った時…







gn
  それとも  



言さんが、ぽつりと呟く。



gn
  いてほしかったですか?  




居心地の悪さに視線を逃がしていたのに
不意に顔を上げると、東さんの視線に捕まった。


あなた
  そんな事…
gn
  少し、残念そうに見えたので  


心臓が高鳴るけど…
言さんは視線を逸らさず、静かな声で続けて言う。


gn
  もし、彼女がいたら…

今夜みたいに
女性を家にあげたりしませんよ
あなた
  ……っ、
あなた
  今夜のこれは、
ただの親切ですか…?


私は、何を聞いているんだろうと
頭の片隅で思う。



でも 言葉にしてしまった。




gn
  …もちろん、
親切でやっているつもりです、が…
gn
  あなたさんだったから
というのはありますね……



あの柔らかい笑顔で、ふっと微笑む。



どうに返せばいいのか わからない。
そんな私を見て、言さんは少しだけ困ったように


gn
  すいません  
あなた
  え?  
gn
  急に変なこと言いましたね  



そう言いながらも、
その表情に後悔の色は見えなかった。




むしろ、こちらの反応を伺っているようで…





gn
  そうそう!
ドライヤーですよね
あなた
  あっ、はい…  
gn
  洗面台の所にあるので、  
使ってください
あなた
  ありがとうございます…  





なんとも言えぬ感情のまま、
ドライヤーで髪を乾かし終えると…


新しい歯ブラシを出してくれたり

家と変わらぬ夜の支度を済ますことができた。












gn
  さて、そろそろ寝ましょうか?  


クローゼットから
客人用の布団を取り出しはじめた。
あなた
  すいません、
こんな事まで…
gn
  気にしないでください  
お客様ですから


言さんは穏やかに笑いながら
慣れているのか、手際よく布団を敷いていく。




私はその様子を見つめながら、
胸の奥がザワザワと落ち着かない事に気が付く。




明日の朝になれば、この夜は終わる。






雨も止んで、
明日の夜は自分の部屋へ帰る。




きっとまた…


今まで通りの隣人同士になる。







そう思うと、なぜだか少し寂しかった。





gn
  これで大丈夫そうですね  


布団を整え終えた言さんが、顔を上げる。



あなた
  ありがとうございます  
gn
  よし、じゃあ…
何かあれば起こしてくださいね?
あなた
  はい、わかりました  
gn
  …おやすみなさい  
あなた
  おやすみなさい…  




これで、終わるはずだった。





けれど…

言さんは寝室へ向かおうとして、足を止める。




gn
  やっぱりダメだな…  





小さな、ひとりごと。





あなた
  言、さん…?  




振り返った、言さんと目が合う。





数秒の沈黙…
窓の外では、相変わらず雨が降り続いている。





gn
  ひとつだけ…
言ってもいいですか?




いつになく真剣な声に、思わず頷く。




gn
  こういう状況につけ込むのは
良くないなとは思っているんですけど…
gn
  たぶん、もう…
隠しきれないなって…






また、数秒の沈黙… そして








gn
  好きです  



飾らない、真っ直ぐでシンプルな言葉。





gn
  隣に引っ越してきてから
ずっと…気になってました



言さんは、照れているのか少し目を伏せる。






gn
  だから今夜、
あなたさんがうちに来てくれた時…
本当に嬉しかったんです



ドキドキが、身体中に響くのがわかる。




返事をしなければいけないのに、
何にも言葉が浮かんできてくれない。






言さんは、慌てて
gn
  あっ、ごめんなさい…
すぐに返事がほしいとかじゃなくて…
gn
  ただ、伝えたかったんです  
あなた
  言さん…  





その優しい声を聞いた瞬間
不思議と緊張がほどけ、私は小さく息を吸う。





  
あなた
  …私も、  
あなた
  私も言さんの事、気になってました  




言い終わる頃には、顔が熱くなっていた。







しばらく見つめ合ったあと…
東さんは安堵したように、ふっと笑う。





gn
  今夜は、眠れそうにないですね  






その言葉に、私も思わず笑ってしまった。









窓の外では、
まだ五月雨が降り続いている。















𝙚𝙣𝙙 .

プリ小説オーディオドラマ