2025年 ソウル
朝、目が覚めたら、窓の外はやさしい光で満ちていた。
春の終わり、夏のはじまり。あたたかい風がカーテンを揺らして、まるで「おめでとう」と囁いてるみたいだった。
今日は、ママとパパの“けっこん”の日。
ずっと前から楽しみにしていた日。
でも…なぜか、胸がふわふわして、少しだけさみしい気持ちもあった。
私はキム・ジェナ。
9歳と11ヶ月。あとちょっとで10歳。
でも、この家にある大切な空気や、ふたりが隠してきた小さな涙の記憶は、全部、覚えてる。
ママが泣いた夜。
ジェノが寂しそうに笑った日。
3人で初めて一緒にごはんを食べた朝。
そして、
いつの間にか、私は「ジェノ」って呼ばなくなっていた。
「ねぇ、パパー今日は何着るの?」
何気なく言った言葉に、ジェノこと、パパが少し驚いて、すぐに優しく微笑んだ日のこと。
「うん。パパ…
パパかっこよくするねㅎㅎㅎ」
私は、あの日からずっと、
『パパ』って呼ぶのが当たり前になってた。
市役所へ向かう車の中、ママは静かだった。
パパの隣で、小さく微笑んでいたけど、どこかで涙をこらえてるみたいだった。
「ママ……大丈夫?」
そっと手を握ると、ママは笑った。
「うん、大丈夫。……でもね、ちょっと夢みたいなの」
「夢?」
「ずっと、心の奥で願ってたことが……叶った日だから」
ママの声は少し震えてた。
私はぎゅっとママの手をにぎった。
市役所の窓口で、ふたりは何かを書いていた。
その文字が、私にはまだむずかしくて読めないけど、
あの紙にふたりの名前が並んでるってだけで、胸がきゅんとなった。
「ご入籍おめでとうございます」
窓口の人がそう言ったとき、ママの目に、光るものが浮かんだ。
パパは、黙ってママの手をにぎって、そして――
「ありがとう、あなた」
って、やさしく言った。
ママが小さくうなずいて、「……ジェノヤ」って返すと、ふたりとも声を出さずに、笑っていた。
あぁ、これが、「家族」なんだなって思った。
パパとママがけっこんしてよかった。
ふたりは同時にこちらを見て、笑った。
ママが、「ありがと、ジェナ」って言って、私の頭をなでた。
パパが、「これからも、よろしくね」って言って、私の手をにぎった。
その手はあたたかくて、ずっと、ずっと、手を離したくなかった。
あの日の空の色も、風のにおいも、パパとママのやさしい笑顔も、
私はきっと、ずっと忘れないと思う。
そして私は――
いつしか「ジェノ」を「パパ」と呼んでいた。
当たり前のように、心のなかで決めていた。
「この人が、私のパパなんだ」って。
想った瞬間から。
そして今日は私の苗字が変わる日でもある。
ママはそのままキム・あなたなんだけど、
私はイ・ジェナになる。
パパとたった1文字しか変わらないこの名前。
大好きだ。
「ジェナヤ、ママたちまだ時間かかるから疲れたなら向こうで座ってていいからね」
「うん」
ママが優しく頬を撫でる。
楽しみで眠れなかったこともあり、座って待つことにした。
周りのざわめきや、人の行き交う音が、どこか遠くのことのように感じられた。
ママとパパは、窓口の向こう側で真剣な表情と時折笑顔を浮かべながら、慎重に何枚もの書類を手に取っていた。
あのふたりは本当にラブラブだな…
あの時から変わらない。ジェナが5歳だった頃から…
しばらくして、ふたりはゆっくりと戻ってきた。
その手には、ふわりと光をはらんだような、なにかがそっと握られていた。
「ウリジェナヤ見てごらん」
ママの声は、優しくて包み込むように穏やかで、まるでジェナだけのために用意された特別な魔法のように響いた。
ジェナはそっと手帳を受け取り、その表紙の柔らかい手触りを感じた。
「…母子手帳」
中を開くと、ママとパパの名前、そして自分の名前が丁寧に書かれている。
「イジェナ…だ。」
えまって、これって、この手帳って…
「赤ちゃん…?」
パパは恥ずかしそうにママのお腹の下らへんを撫でると、「うん」と頷いた。
「さ、おうちでパーティーしよう!」
3人で手を繋ぎ、帰路に着く。
ふと、背中の向こう側で市役所のテレビからアナウンサーの声が聴こえた。
NCT DREAM의 제노 씨가 오늘 오랜 기간 교제했던 일반 여성과 전격 결혼을 발표했습니다.
새 생명이 깃들었다고 합니다.
관계자 일동 축복 분위기에 휩싸여 있습니다.
속보가 들어오는 대로 전해드리겠습니다.
【完】












編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。