あっという間に時は過ぎ、雄英高校の一般入試の日がやって来た。
私は樹と人使の3人で、入試会場である雄英へと歩みを進めている所だ。
だが、試験本番どころか試験会場にも着いていない今、樹が緊張に襲われ立ち止まってしまう。
私と人使は驚きと呆れを隠せないまま、樹の隣に止まる。
その口ぶりからすると、実技は大丈夫な様子。
しかし、筆記にイマイチ自信がないようで、始まってすらいないのに不要な心配をしている。
正直、私と人使の2人がかりで勉強を教えたというのだから大丈夫な気が……。
不味いと思った人使が、樹の背中をポンポンと叩いて元気づけると、若干呻きながらも立ち上がる。
この後、仲良く3人で歩道を走り、無事雄英に到着した。
着いた後に時計を見ると結構ギリギリだったので危うかった。
筆記試験を終えて、私達は今、実技試験の説明会場に居る。
何処かのドームかと思う程広いこの会場内には、「ヒーローになりたい」という志を高く持った受験生達が数多く集まっているのだ。
無論、私達3人も同じ。
先程まで暗かった会場の電気が付き、会場の大きなモニターに“UA”の文字が投影される。
モニター前の壇場には大きな演壇があり、そこには1人のプロヒーロー——プレゼントマイクが立っていた。
無駄に大きな声を出すプレゼント・マイクとは対照的に、シーンと静まりかえる会場内。
私はその声の大きさに思わず顔を顰めた。
熱の冷め切らないプレゼントマイクの大きな声によって、またしても会場はシーンと静まった。
大声にまたしても顔を顰め、心の中でプレゼントマイクに向けた辛辣な言葉を思い浮かべた。
…………。
質問に対し一切リアクションのない受験生達。
無慈悲である。
どうでもいい思考はさっさと捨て去り、手元の受験票を見る。
樹が呻き声とも取れる言葉を発しながら、机に突っ伏した。
くしゃり、という乾いた音と共に。
1人の受験生の問いかけにプレゼントマイクが了承の返事をすると、その受験生がパッとライトアップされた。
一見、真面目そうな面持ちの男だったが、見た目通りの真面目っぷりである。
私が心の中で感嘆の声を漏らしていると、真面目っぽい生徒が後ろを振り向いて誰かを指差した。
縮毛の人が縮こまりながら口を隠すと同時に、会場内から微かな笑い声が聞こえる。
質問者が丁寧にお辞儀をした後、席に着くと、当たっていたスポットライトがスッと消えた。












編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。